[2021_10_09_01]社説 東京震度5強 首都直下型にどう備えるか (読売新聞2021年10月9日)
 
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社説 東京震度5強 首都直下型にどう備えるか

 2021/10/09 05:00
 深夜の首都圏を襲った強い揺れは、地震がいつどこで起きても不思議はないことを実感させた。発生が懸念される首都直下地震にどう備えるか、真剣に考えねばならない。
 7日の地震は東京都と埼玉県の一部で震度5強を記録した。東京23区内で5強を観測したのは東日本大震災以来で、当時を思い出した人も多かったのではないか。
 震源の千葉県北西部周辺は、地表を覆うプレート(岩板)がぶつかり合う場所で、地震が多い。今後数日間は、同規模の地震が起きる恐れがあり、警戒が必要だ。
 東京都足立区では、日暮里・舎人ライナーの列車が脱輪し、乗客3人がけがをした。一歩間違えば大惨事につながりかねなかった。復旧を急いでもらいたい。
 JRも主要路線で運転を見合わせ、自治体は帰宅できない人を収容する応急の施設を開設した。ダイヤは翌朝まで乱れ、通勤時間帯も混雑した。地震に対する都市のもろさが表れたと言える。
 鉄道各社は、地震への備えや、発生後の対応が適切だったのかについて、検証することが不可欠である。日頃から地震を想定した計画を練り、訓練を重ねて、いざという時に少しでも混乱を減らせるようにしてほしい。
 今回は、停電や水道管の破損も相次いだ。都市インフラの機能停止を避けるためには、絶えず点検や補修に努めることが重要だ。
 新型コロナウイルスの感染予防で、テレワークの習慣が浸透してきた。企業側も、柔軟にテレワークに切り替え、通勤の混乱を回避するよう工夫してはどうか。
 首都圏では今後30年以内に、70%の確率でマグニチュード(M)7級の首都直下地震が起きると予想されている。M5・9だった今回とは比べものにならない巨大な規模で、もし実際に発生したら、大混乱が必至とみられる。
 帰宅困難者は最大800万人、死者は2万3000人に上ると予測される。少しでも被害を減らすため、今から屋内に倒れそうな家具はないかを点検し、会社や学校から帰宅できない場合はどうするかを考えておかねばならない。
 日本は、太平洋側に強い揺れや津波を広範囲にもたらすとされる南海トラフ地震の危険も抱えている。一帯には大阪、名古屋などの大都市が集中している。危機意識を共有することが大切だ。
 政府や自治体は、今回の地震から教訓をくみ取り、現在の計画や備蓄で巨大地震に対処できるのか、課題を洗い出してほしい。
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