[2021_09_02_02]8000ベクレル超の建設発生土の搬入先決まらず 福島県の帰還困難区域 復興の妨げに(福島民報2021年9月2日)
 
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8000ベクレル超の建設発生土の搬入先決まらず 福島県の帰還困難区域 復興の妨げに

 東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域内の復旧・復興工事で発生した土壌「建設発生土」のうち、放射性物質濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超える分の搬入先が定まらず現場付近などで保管が続いている。法律の対象外のためだ。福島県は搬入先が決まらなければ工事が停滞して復興の妨げになるとし、中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)への搬入を国に求めている。所管する環境省は県と協議に入ったが打開策を見いだせておらず、帰還困難区域の新たな課題となっている。
 放射性物質汚染対処特別措置法などに基づき、放射性物質濃度が1キロ当たり8000ベクレル超の焼却灰、稲わら、堆肥などは「指定廃棄物」として国が処分責任を負うが、土壌は廃棄物に該当しない。放射性物質に汚染された表土などの建設発生土に関する規定は法律になく、原発事故の発生から間もなく10年半となる今もなお、対応が宙に浮いたままとなっている。
 県によると、建設発生土は県発注の河川護岸工事、海岸堤防復旧工事で発生し、富岡、大熊両町に合わせて約1500立方メートルある。10トントラック約150台分に相当し、工事現場付近や仮置き場に保管されている。放射性物質濃度は1キロ当たり約1万4000〜約2万7000ベクレルという。県は同8000ベクレル以下に下がるには数十年かかるとみている。
 県技術管理課の担当者は「今後発生する災害に備えて工事を進めなければならないが、建設発生土が放置されれば工事が滞る可能性がある。早急に解決してほしい」と訴える。内堀雅雄知事は6月の中央省庁への要望活動で「速やかに関係機関と協議を進め中間貯蔵施設へ搬入する」よう環境省や復興庁、農林水産省に求めた。
 県からの要請を受け環境省は具体的な協議を始めたが、1日現在で結論は出ていない。同省担当者は「個別の状況を考慮し、さまざまな選択肢を含めて検討していく」と述べるにとどめている。
 過去には、県内のため池の放射性物質対策事業で発生した土壌、除染基準を下回る道路側溝の堆積物も建設発生土と同様に法律の対象外だった。2015(平成27)年ごろに県内自治体から早急に対応するよう求める声が上がり、国が中間貯蔵施設への搬入を認めた経緯がある。
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