[2021_07_21_06]東京電力はなぜ原発を動かしてはいけないのか (下) 根深い東電体質の危険=「組織内で情報共有がうまくいっていない…」 それが福島第一原発事故を招いたことは東電自ら認めている 保安規定をたやすく破る会社が原発を動かして良いわけがない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年7月21日)
 
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東京電力はなぜ原発を動かしてはいけないのか (下) 根深い東電体質の危険=「組織内で情報共有がうまくいっていない…」 それが福島第一原発事故を招いたことは東電自ら認めている 保安規定をたやすく破る会社が原発を動かして良いわけがない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

3.規制基準適合性審査を通すため

 東電の経営陣は柏崎刈羽原発の再稼働の前提として、東電に原子力を運営する資格があるとする文書を規制委に提出している。
 そこには「社内の関係部門の異なる意見や知見が、一元的に把握され、原子力施設の安全性向上に的確に反映されなければならない」とされていたが、今回の事案はどれ1つ本店が把握していなかった。
 この文書も明白なウソだった。7月13日、規制委は東電の本店を立入検査した。そこで小早川社長やテロ対策部門の職員から聴取したという。
 その結果について「組織内で情報共有がうまくいっていない印象はあった」(金子修一検査チーム長)との説明が記者にされている。
 これは2000年代から続く東電の体質であり、それが福島第一原発事故を招いたことは東電自ら認めている。
 その体質は依然として露骨に現れ続け、原発を危機に陥れている。
 運転していないからといって安心してはいけない。
 福島第一原発の現状、汚染水対策、いずれも同じ体質の下で事態は進行しているのだから。

4.東京電力の広報姿勢

 これら一連の事件が発覚する前後に、立地自治体では地域説明会が開催されている。
 再稼働を巡る通り一遍の説明会で、今回の問題についての説明がなかったことで参加者から批判が集まったと報道されている。
 東電は事前に計画していた説明会であり、今回の事案があっても予定通り実施することにしたというが、これこそが地元住民を軽視する姿勢に他ならない。
 これだけ重大事案として報道もされていることに一切触れず、再稼働を巡る説明だけをして、いったい誰に納得してもらうつもりなのか。
 さらに、これらの説明が立地自治体だけで開催されており、消費者である東京圏を含め東京電力管内ではまったく実施されていない。
 消費者にも説明することが説明責任であることを東電は全く認識していない。
 東電は規制委が設定した4月7日の締め切り期限までに弁明を行わなかった。「弁明の余地がない」と判断したという。そうならば、再稼働など出来るわけもない。柏崎刈羽原発の再稼働を撤回すべきである。
 東電は、この一連の出来事については、市民団体に対しては次のように弁明している。
 『…対応は次の方針に沿って取り組んでまいります。
 1点目ですが、福島第一原子力発電所事故まで遡り、安全文化や核セキュリティ文化が現場の隅々まで根付いていたのか、組織的な課題を明らかにしてまいります。
 2点目として、柏崎刈羽原子力発電所にとどまらず、社長を含む経営層・本社まで広範囲に調査を行い、原子力部門の組織全体の課題を明らかにしてまいります。
 3点目として、核物質防護業務について、全発電所の課題抽出と解決を図り、核物質防護体制の再構築を目指してまいります。
 4点目として、原因分析や改善措置の内容に対して、核セキュリティや安全文化に精通した第三者が評価を行うことで、透明性を確保いたします。
 最後に、これらの取り組みを、自社に閉じることなく、他電力や他業界などの国内外の外部専門家の指導を得ながら、良好事例などを積極的に取り入れ進めてまいります。
 また、この取組みの状況については、地元をはじめ社会の皆さまには様々な機会を通じて適宜お知らせしていくことが望ましいと考えております。一連の事案については、様々な方法を検討し、福島の皆さまにもしっかりと情報発信してまいります。…』
 未だに「情報発信」などと一方的な主張の拡散で済むと考えている。
 これでは誰にも理解を得ることは出来ない。

5.原子力規制委員会の問題点

 更田豊志委員長は、この間の東電不祥事について「不正なのか、分かっていて意図的にやらなかったのか。あるいは知識が足りなかったのか。技術的な能力の問題か。それとも、なめているのか。この程度でいいんだと。委員会がつかみたいのはまさにそこです。今後の検査で時間がかかると思うが確かめる」と述べている。これではまるで人ごとである。
 審査を行い許可を出す当事者が、その許可を出した直後にこれだけの問題を起こしている。
 さらに、原発の再稼働に向けた審査は、保安規定の審査があるのだが、これが許可される前にID不正使用とセキュリティシステムの破損が発生している。
 保安規定とは、原発の保守を行う手順書である。もちろん、侵入防止は重要な点の1つであることは言うまでもない。
 保安規定に何か記載され、それがどのように破られたのかは、保安規定そのものが対テロ対策などの機微情報を含むとされて公開されていないので判断できない。
 しかし、規制委ならばそれが分かっているはずであり、規定をたやすく破る会社が原発を動かして良いわけがないことも当然だ。
 そうした意味からも核燃料の移送禁止命令を出したのだから、原子力を運営する基本的な資格があるかをゼロから、つまり設置許可を取り消してから見直すしかないのである。
          (初出:たんぽぽ舎月刊ニュース7月No307)
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