[2021_04_15_01]放射性廃棄物の地層処分について(その12) 「使用済み核燃料の1000年保管と直接処分」 使用済み核燃料の1000年保管は可能である 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年4月15日)
 
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放射性廃棄物の地層処分について(その12) 「使用済み核燃料の1000年保管と直接処分」 使用済み核燃料の1000年保管は可能である 平宮康広(信州大学工学部元講師)

◎ 日本とイギリス、フランス以外の国々、たとえばアメリカやドイツに使用済み核燃料再処理工場はない。
 アメリカやドイツは、再処理=再加工を施すことなく使用済み核燃料を地層処分=直接処分するつもりでいる。だが、「直接処分」する場合でも、地下水や化石水、地熱や崩壊熱の問題から逃れることはできない。
 また、巨大なキャスクに使用済み核燃料を挿入して地層処分することになるので、地下施設の面積を4倍以上広げる必要も生じる。
 だが、使用済み核燃料を地上で1000年以上保管し、その後「直接処分」するのであれば、事情が異なる。

◎ 使用済み核燃料が放出するガンマ線の大部分をプルトニウム238が放出している。プルトニウム238の放射能半減期は約87.7年である。したがって、使用済み核燃料が放出するガンマ線の量は、1000年後に1000分の1以下になる。そして崩壊熱が無視できるくらいに小さくなる。
 経産省とNUMOでさえ、アルファ線やベータ線も含めて使用済み核燃料が放出する放射線の線量は1000年後に100分の1になる、と述べている。

◎ 地上で1000年以上保管した使用済み核燃料は、再処理=再加工を施すことなくコンパクトな軽量キャニスタに実装することができる。そして耐水性の高い軽量素材で人工バリアをつくることができる。それにより、立坑に地下水が浸水した場面で地上に引き上げることが可能になり、化石水の浸水にも長期間耐えることができるかもしれない。
 使用済み核燃料を地上で1000年以上保管し、その後「直接処分」するとの考えは、かなり安全な放射性廃棄物の地層処分を可能にする。
 だが、アメリカやドイツに、使用済み核燃料を地上で1000年保管する、との考えはない。
 むろん、日本とイギリス、フランス等にもない。使用済み核燃料を地上で1000年以上保管することになれば、原子力発電を断念することになりかねないからである。

◎ ところで、建築の専門家が、コンクリート建造物は耐用年数が100年しかないため、使用済み核燃料を1000年以上保管する格納庫の建設は困難である、と述べる場合がある。
 だが、ヴェネツィア市に、約1000年前に建造された巨大な工廠(アルセナーレ)が今も残っている。約1万6000人の労働者が働いていたこの工廠の建材は石材である。
 ヴェネツィア市には、同じ頃に建造されたサン・マルコ大聖堂もある。
 また、イスタンブール市には、約1500年前に建造されたアヤソフィア大聖堂がある。アヤソフィア大聖堂は、989年の大地震にも耐えた。サン・マルコ大聖堂もアヤソフィア大聖堂も建材は石材である。
 石材を使用すれば、使用済み核燃料を1000年以上保管する格納庫の建設が可能である。エジプトのピラミッドとちがい、サン・マルコ大聖堂もアヤソフィア大聖堂も建設時や建設後の資料が豊富に残っている。  (その13)につづく
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