[2021_04_02_03]放射性廃棄物の地層処分について(その8) 放射性廃棄物の地層処分と地下水問題(地層処分を開始してから10〜30年後に大惨事が勃発する) 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年4月2日)
 
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放射性廃棄物の地層処分について(その8) 放射性廃棄物の地層処分と地下水問題(地層処分を開始してから10〜30年後に大惨事が勃発する) 平宮康広(信州大学工学部元講師)

◎ 経産省とNUMOは、ガラス固化体=高レベル放射性廃棄物、および再処理工程で生じる放射性残渣を詰めたドラム缶=低レベル放射性廃棄物を全国1カ所の地域で地層処分しようとしている。
 だが、地熱が大きな障害になり、またガラス固化体の製造技術が不完全なため、ガラス固化体も「ドラム缶」も深度の浅い岩盤上層に埋設することになりそうである。
 しかも全国複数カ所で埋設することになりそうである。それについてはすでに述べたが、より大きな問題がその先にある。

◎ 経産省とNUMOは、直径数10m(ひょっとして直径100m前後)の巨大な立坑を掘削し、地下300m以深に巨大な地下施設(面積10平方km)を建設した後、50年の歳月をかけて、4万体のガラス固化体を地下施設に埋設するつもりでいる。
 だが、巨大な立坑の掘削と巨大な地下施設の建設、そしてそれらを50年維持するのは困難で、「大惨事」が勃発する危険がある(ちなみに、経産省とNUMOは、エレベータで地上施設と地下施設を別途結び、「ドラム缶」を地下施設に埋設するつもりでいる)。

◎ ところで、ヨーロッパの平野部はおおむね洪積層で、日本の平野部はおおむね沖積層である。
 地表から礫層下位層までの深度=礫層の「厚さ」は、ヨーロッパの場合50m前後、日本の場合150m前後で、500m以上の場合さえある。礫層の中を地下水が流れているが、どこをどう流れているかは不明である。
 したがって、掘削中の立坑が地下水系とぶつかる危険が大いにある(ちなみに、日本の降雨水量はヨーロッパの約2倍で、地下水の水量はおそらく2倍以上である)。

◎ 経産省とNUMOは、トンネルの止水技術等を応用して地下水の浸水を防ぐ、と述べている。だが、地下水系は地下を流れる「川」である。地下水系の高低差は1000m以上ある場合が多いと考えられ、水のパワーは強い。トンネルの止水技術等で浸水を防ぐことはおそらくできない。
 運よく、地下水系と衝突することなく立坑を掘削し、地下300m以深に地下施設を建設できたとしても、その後ガラス固化体と「ドラム缶」を埋設する50年間、立坑と地下施設は「大水害」の危険にさらされる。
 地下水系は年間10〜20m移動する。豪雪や豪雨の後、新しい地下水系が生じる場合もある。

◎ 立坑を掘削して地下施設を建設してから10〜30年後に地下水系が立坑の壁を突き破り、地下施設が水没して「大惨事」が勃発する危険が大いにある。
 ちなみに、経産省は「科学的特性マップ」と称するものを作成して全国各地で地層処分の説明会を開催しているが、科学的特性マップには火山や活断層に関する記載があっても地下水や地下水系に関する記載がまったくない。経産省にとって、「科学」とはそのようなものであるらしい。 (その9)に続く
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