[2021_03_29_03]放射性廃棄物の地層処分について(その6)(16回の連載) ガラス固化体の技術問題 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年3月29日)
 
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放射性廃棄物の地層処分について(その6)(16回の連載) ガラス固化体の技術問題 平宮康広(信州大学工学部元講師)

◎ 戦前の日本は、国家総動員法の下で黒部川第三発電所の施工を強行した。ダム建設資材を運搬するトンネルを掘る必要があった。
 当初、トンネルを掘削する黒部峡谷中腹の地温は約65度Cであったが、掘削を開始してから約10カ月後に100度Cを超え、166度Cになる。そしてダイナマイトが自然発火した。
 黒部峡谷中腹の地温が166度Cに上昇した原因は今もわからないが、地温が変動して高温化する場面がある。地温勾配3〜5度Cの地域を見つけ出しても、ガラス固化体の埋設が可能になるとは言えない(ちなみに、黒部川第三発電所の施工期間は1936〜1940年で、約300名の人命を失った)。

◎ ところで、全国各地の温泉井戸の深さから察するに、日本の地層は1000m掘削しても立坑が岩盤層に届かない場合がある。
 したがって、経産省と電力資本=NUMOが、岩盤上層にガラス固化体を埋設する場合があるかもしれない。
 経産省とNUMOは、今のところ「岩盤にガラス固化体を埋設する」との表明を撤回していないので、ここで岩盤上層でのガラス固化体埋設の危険をしつこく論じるつもりはないが、しかし特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律=最終処分法は、地下300m以深だけを地層処分の条件にしている。
 すなわち、最終処分法は「岩盤」での地層処分を条件にしていない。むろん地温は変動して高温化する場面があるので、深度の浅い地下にガラス固化体を埋設しても対策になるとは思えないが、岩盤上層でのガラス固化体埋設は法的に可能であるということを、軽視できない。

◎ ガラス固化体を埋設する場面で直面する温度問題は、地温問題の他にもうひとつ、ガラス固化体の崩壊熱問題がある。
 説明会で、経産省とNUMOから、ガラス固化体の初期温度は280度Cで、熱は1500ワットであるとの説明を得た。
 そして製造後30〜50年経過したガラス固化体の熱は350ワット程度になり、埋設可能な温度にまで下がる、との説明を得た。
 他方、ガラス固化体の重量は100kg前後で、大部分がセシウム137とストロンチウム90である、との説明も得た。
 だが、ストロンチウム90の崩壊熱は1kgあたり460ワットである。ストロンチウム90の含有量が10kgだとしても、ガラス固化体1体の初期熱はストロンチウム90だけで4600ワットになる。
 そして、崩壊熱が放射能半減期に比例して低減すると仮定した場合、30年後のガラス固化体の熱は2300ワット弱になる(ちなみに、プルトニウム238の崩壊熱は1kgあたり540ワットである。セシウム137の1kgあたりの崩壊熱は分からないが、電子ボルトレベルでの崩壊熱はストロンチウム90の約2倍である)。(その7)に続く
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