[2021_01_22_03]東京高裁・原発避難者訴訟 津波対策 国の責任否定 仙台高裁と判断分かれる(東奥日報2021年1月22日)
 東京電力福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民ら91人が東電と国に計約4億5千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は21日、国と東電に賠償を命じた一審判決を取り消し、国の責任を否定した。足立哲裁判長は、東電に津波対策を命じなかった国の対応について「著しく合理性を欠くとは認められない」と判断した。
 原発事故の避難者らが国を訴えた集団訴訟の高裁判決は2件目。1件目の昨年9月の仙台高裁判決は国の責任を認めており、判断が分かれた。原告側は判決を不服とし、最高裁に上告する方針。
 判決は一方で、東電に対して原告90人に計約1億1972万円の支払いを命令。国と東電を合わせ62人に計3855万円の賠償を認めた一審判決より救済範囲を広げ、金額も3倍超に増えた。
 訴訟では、2002年に政府機関が公表した地震予測「長期評価」の信頼性が争われた。
 足立裁判長は、長期評価の内容には公表当時から異論があり、同年に土木学会が公表した知見とも整合しないとして、これを基に巨大津波の襲来を予見できたとは言えないと指摘。防潮堤の設置や扉の水密化など対策を講じたとしても、原発内への津波の浸水を防止できなかったとして「津波対策に関する国の対応に問題があったと認めることは困難だ」と述べた。
 その上で、東電の賠償責任を認め、事故当時に誕生していなかった1人を除く原告30人に7万円〜約1500万円を支払うよう命じた。
 一審は全国初判断となった17年3月の前橋地裁判決で、東電が長期評価に基づき、原発の敷地を超える津波の襲来を予見できたのに、対策を怠ったと指摘。東電に津波対策を命じなかった国の対応も「著しく合理性を欠き、違法だ」と述べた。
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