[2021_01_16_06]上関原発ボーリング調査は2020年12月15日に再度中断 ボーリング調査を実施できないのは祝島漁民の同意を得ていないから 中国電力の「2000年補償契約で補償済み」との主張が成り立つはずはない 中国電力が2021年に三度調査を試みても、山口県と共に大恥をかくだけ 連載「権利に基づく闘い」その15 熊本一規(明治学院大学名誉教授)(たんぽぽ舎2021年1月16日)
 
参照元
上関原発ボーリング調査は2020年12月15日に再度中断 ボーリング調査を実施できないのは祝島漁民の同意を得ていないから 中国電力の「2000年補償契約で補償済み」との主張が成り立つはずはない 中国電力が2021年に三度調査を試みても、山口県と共に大恥をかくだけ 連載「権利に基づく闘い」その15 熊本一規(明治学院大学名誉教授)

◎ 中国電力は、昨年12月15日に上関原発予定海域でのボーリング調査を中断する旨発表した。
 同年11月4日から調査を試みたものの、実際に調査海域に来る日は週に一度程度のうえ、来ても祝島漁民に協力を断られて何もできずに帰るだけであった。
 2019年にも11月8日からボーリング調査を試み、祝島漁民に協力を断られて何もできないまま12月16日に中断を発表したが、昨年には、より密度の薄い「調査の試み」を繰り返しただけであった。

◎ 祝島漁民の同意が得られなければ調査ができないのは、調査が
祝島漁民の「漁業を営む権利」を侵害するのに、補償をせず、祝島
漁民の同意を得ていないからである。
 中国電力は「2000年補償契約で祝島漁民に補償済み」と主張しているが、祝島漁民は同契約に伴う補償金を受け取っていない。
 さらに、2000年補償契約の際に2019年・2020年のボーリング調査の実施が予測されていたはずはないうえ、祝島漁民も2000年当時と今とではメンバーがかなり異なっている。
 したがって「2000年補償契約で補償済み」との中国電力の主張が成り立つはずはない。

◎ 中国電力は、2019年には、上記の点を指摘した祝島島民の会からの「反論及び質問書」が届いた12月16日に調査中断を発表した。
 2020年には、11月10日に「反論及び質問書」への回答を要求したところ、約1カ月後の12月11日に「2000年補償契約で補償済み」との回答を口頭で行なってきた。
 「2000年補償契約で補償済み」では説明できない点を尋ねられているにもかかわらず、「2000年補償契約で補償済み」を繰り返すのでは回答になっていないことは明らかであり、回答不能と受け取られてもやむを得ない。

◎ 2021年、中国電力は三度(みたび)ボーリング調査を試みようとするだろうか?
 ボーリング調査を試みるには山口県から一般海域占用許可を得なければならず、県が同許可を出すには「利害関係人の同意」を得なければならない。
 山口県は「共同漁業権は排他的権利」との水産庁HP上の記述を根拠として祝島漁民を「利害関係人」に含めてこなかったが、水産庁は、筆者とのやり取りをつうじて、HP上の記述が不正確であり、「共同漁業権の排他性は他の共同漁業権にのみ及ぶ」ことを認めているから、これ以上祝島漁民を「利害関係人」に含めないことは許されない。
 仮に山口県が三度違法な許可を出したとしても、中国電力は、2019年・2020年よりもさらに密度の薄い「ボーリング調査の試み」しかできず、山口県も中国電力も三度大恥をかいて、さらに惨めになるだけである。

注:ボーリング調査中断に関し、
   詳しくは、 筆者HP
   及び同HPに掲載した筆者へのインタビュー記事
   (長周新聞2020年12月2日号)を参照されたい。
KEY_WORD:上関原発計画_: