[2021_01_05_04]原発にさようならを_鎌田慧(東京新聞2021年1月5日)
 
参照元
原発にさようならを_鎌田慧

 日本の財界を代表する中西宏明・経団連会長は年頭あいさつで、原発再稼働が進まないことについて触れたあと「安全性やコスト面で有用な小型原発の開発を進めないと、世界から大きく取り残される」と語った。
 原発関連産業としての日立製作所の会長でもある焦燥感が感じられる。まだ原発製造にこだわっている。新型原発開発は政府のエネルギー計画が2030年になっても原発20%などというバカげた方針とともにある。
 原発にキッパリ別れを告げたドイツのメルケル首相。それと比べても詮方ないが、電力会社や重電機メーカーのトップが財界代表、その力を背景に政治力をもつ自民党政治では、人びとのいのちは粗末にされがちだ。
 「私たちは、自分が生きるということに、しあわせに生きることに、もっと貪欲になるべきではないか。…生きる権利に挑戦し、迫りつつあるもの−公害はその最大の敵のひとつだ−に対して人間としてどう生きるべきか」(四日市・死の海と闘う)と書いた田尻宗昭さんは海上保安庁の巡視船の船長だった。海を汚染した企業を摘発、刑事責任を追及した。「見舞金でケリをつける」ことに反対だった。
 環境汚染といっても原発の方がはるかに恐ろしい。
 住民のいのちと将来とを引き換えにして、企業が儲ける。それが許されている社会の不思議。
       (1月5日東京新聞朝刊23面「本音のコラム」より)
KEY_WORD:温室効果ガス_原発新増設_: