[2020_12_24_01]韓国の月城原発区域の地下水、放射性物質汚染…トリチウムが基準値の18倍(ハンギョレ新聞2020年12月24日)
 
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韓国の月城原発区域の地下水、放射性物質汚染…トリチウムが基準値の18倍

 韓水原、タービン地下の貯蔵水測定で基準値の18倍 7年前から問題提起されていたが、昨年になって対策チーム 原発境界の観測井の濃度は近隣の村の地下水の150倍 「環境放出」の可能性高いが…韓水原と原安委は「確認されていない」
 慶州(キョンジュ)の月城(ウォルソン)原発の敷地の地下水が、広範囲に放射性物質であるトリチウムで汚染されているという事実が、韓国水力原子力(韓水原)の独自調査で明らかになった。韓水原は、地下配管や使用済み核燃料貯蔵槽などを地下水に含まれていたトリチウムの主な流出源と見て、設備の交替や補修などの対策を推進してきたことが確認された。
 トリチウムは福島原発事故の汚染水に大量に含まれて議論を呼んでいる放射性物質であり、人体から内部被ばくを起こし、遺伝子変異を招くことが知られている。原発の決められていない経路から放射性物質を流出させることは、原子力法上認められていない。今回流出が確認されたトリチウムは、原発の敷地の境界に設置された地下水観測井でも高濃度で検出され、原発の外部にまで拡散している可能性を排除できない。それでも韓水原と原子力安全委員会は「該当する観測井はすべて原発区域内にあるため、原子力法上、外部流出といえる『環境放出』とはみられない」とし、「国民に対する公開」規定を適用しなかった。流出の規模も把握していない。
 ハンギョレが23日に入手した韓水原の報告書「月城原発敷地内の地下水のトリチウム管理の現状および措置計画」によると、韓水原は昨年4月に月城原発3号機のタービン建屋下部の地下水排水路(タービンギャラリー)のマンホールに溜まった水から、1リットル当たり71万3000ベクレルのトリチウムを検出した。この排水路は放射性物質の排出経路ではない。71万ベクレルは、原子力安全委員会(原安委)が定めた排出可能排水路に対する管理基準(4万ベクレル/リットル)の17.8倍にのぼる高濃度だ。
 韓水原が地下水監視プログラムを稼働した結果、昨年8月から報告書作成直前の今年5月までに、月城3号機の使用済み核燃料貯蔵槽(SFB)の下部の地下水から最高濃度8610ベクレル(1リットル当たり)のトリチウムが検出された。同じ期間、2号機の使用済み核燃料貯蔵槽の下の地下水からは最高2万6000ベクレル、1号機の使用済み核燃料貯蔵槽の下の地下水からは最高3万9700ベクレルのトリチウムが検出された。
 原発で計画された排気口と排水口を通さない「非計画的放出」は、濃度とは関係なく原子力法に基づく運営技術指針違反だ。監視と管理が行われず、原発周辺の環境と住民に及ぼす影響を評価できないからだ。月城原発はトリチウムによる地下水汚染の可能性を早ければ2013年、遅くとも2017年から認識していた可能性が高い。
 韓水原の報告書によると、月城原発3号機近くに設置された地下水観測井(SP-5)をはじめとする一部の観測井では、2013年にも最近と似たようなレベルのトリチウムが検出されていた。当時、韓水原中央研究院の研究チームは、国外の原発の非計画的な放出による地下水汚染事例を調査し、対応の必要性を提起した。2017年前半からは、地下水汚染の危険性が高い構造物近くの一部の観測井で濃度が著しく高くなった。2号機近くの観測井(WS-2)では、一時2万8200ベクレルにまで上がった。しかし韓水原は、昨年5月になってようやく「トリチウム懸案特別チーム」を立ち上げ、本格的な対応に乗り出した。原安委もまだ非計画的放出に対する報告と管理基準設定を行っておらず、対応が遅いという指摘は避けられない。
 これと関連し、韓水原は報告書の存在は認めながらも「現在までに非計画的な流出は確認されていない」という公式な立場を維持している。また「重水炉の特性上、原発敷地内のトリチウムの濃度は周辺地域に比べて相対的に高いが、現在まで流出は確認されていない」と述べている。
 韓水原はトリチウムによる地下水汚染の遮断対策として、地下配管を交換するとともに、使用済み核燃料貯蔵槽、冷却水から放射性物質を吸着して除去する樹脂を集めた廃樹脂貯蔵タンク(SRT)、液体廃棄物タンク(LWT)などを点検して補修する対策を推進してきた。このような対策は、これらの施設をトリチウムの地下水流出源とみなすということだ。これらの施設は地下に設置されたプールのような形で、厚さ1メートルを超えるコンクリート水槽の内側に防水処理を施した構造だ。金属材で設置されたほかの原発施設よりも老朽化による損傷に弱い。
 韓水原の報告書を検討した専門家は、トリチウムが施設の損傷部分を通して漏れるだけでなく、施設に浸透して染み出る可能性にも注目しなければならないと話す。トリチウムはセシウムやテクニシウムなどのようなガンマ核種と違い、大きさが特に小さく、厚い鉄板からも鉄の原子の隙間に入り込んで通過するためだ。実際に、重水素とトリチウムを燃料に利用する核融合研究では、このような過程を通じた反応で金属の汚染を防ぐことが主要課題の一つとなっている。
 ある原発専門家は匿名を前提に「もし亀裂を通じて漏れているなら、大きいガンマ核種も検出されるはずだ」とし「すべての使用済み核燃料貯蔵槽の下部の地下水と20個以上の観測井でトリチウムだけが検出されている事実からみれば、浸透による流出を疑わざるを得ない」と述べた。
 このような指摘どおり、トリチウムが浸透を通じて染み出ているなら、問題の解決は容易ではない。また別の原発専門家は「長い間トリチウムで飽和した老朽化した原発の構造物をそのまま放置してトリチウム放出を根本的に防ぐことは不可能。貯蔵槽の地下を掘って解体するレベルの調査を通じて、問題が確認されれば貯蔵槽内部の防水用エポキシ塗膜をステンレス鉄板に取り替えなければならない」と話した。費用も問題だが、原発を運営している状態では簡単には行えない対策だ。
 トリチウムは韓水原が調査を始めた2013年以降、1・2号機の原発敷地北西境界地域に設置された5カ所の地下水観測井すべてから検出されており、その濃度は最高で米国原子力規制委員会(NRC)の制限値(740ベクレル/リットル)を超える、1リットル当たり1320ベクレルに及んだ。1号機の使用済み核燃料貯蔵槽から北に450メートルほど離れた敷地境界観測井(SP-11)でも、最高924ベクレルが検出されている。慶北大学放射線科学研究所が昨年、環境放射能調査の過程で原発近くの慶州市陽北面(ヤンブクミョン)ボンギル里で測定した地下水の最高濃度8.81ベクレルの100倍を超える高濃度だ。
 原発境界地域の観測井からの高濃度トリチウム検出を知った地域の脱原発運動団体は、地下水の移動性を考慮すると敷地の境界の外にもトリチウム汚染が拡散していることは明らかだとし、対策を要求している。脱原発慶州市民共同行動のイ・サンホン執行委員長は「原発の外に拡散しているかどうかは、トリチウムが検出された境界地域の外部に地下水観測井を設置して調査すれば簡単に確認できるのに、韓水原と原安委がこのようなた努力もせず環境(外部)には放出されていないと断定するのは納得できない」とし「速やかに環境放出の有無を確認し、汚染防除などの措置を取らなければならない」と話した。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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