[2020_12_11_14]むつ中間貯蔵 共用検討 電事連 原発各社の燃料搬入 関電支援が実質的狙い 「筋違い」むつ市長不快感 方向性決まっていない 電事連(東奥日報2020年12月11日)
 
 大手電力でつくる電気事業連合会が、原発の使用済み核燃料を一時保管するリサイクル燃料貯蔵(RFS)の中間貯蔵施設(むつ市)について、原発を持つ各社による共同利用を検討していることが10日、分かった。施設はRFSに出資する東京電力ホールディングスと日本原子力発電の燃料受け入れを前提に建設しているが、実現すれば他電力の利用が可能となる。関電を含め大手電力が施設の使用料を支払う案などが持ち上がっている。
 運転開始から40年を超えた原発の再稼働を巡り、福井県から県外の中間貯蔵施設の候補地を示すよう求められている関電を支援するのが実質的な狙い。実現には、むつ市や本県の理解が必要とされるが、協議の難航が予想される。電事連の池辺和弘会長(九州電力社長)は18日に東京都内で会見する予定で、発言が注目される。
 RFSは本紙取材に「何も聞いていない」、本県の柏木司副知事は「電事連に確認したが、そういう事実はない−とのことだった」と話した。
 施設は11月、原子力規制委員会の安全審査に合格。操業開始時期は2021年度をめどとしており、RFSは、工事認可審査の進捗を見て地元と協議する意向を示している。
 福井県は、40年超の美浜原発3号機(同県美浜町)、高浜原発1、2号機(同県高浜町)を再稼働する前提条件として、中間貯蔵施設の県外候補地を20年内に示すことを関電に求めている。18年に関電がRFSに出資し共同利用することで最終調整していることが分かった時は、むつ市の宮下宗一郎市長は拒否。今回は関電だけを前面に出さず、電力業界が一体となって共同利用を後押しする考えだが、地元の理解が得られるかどうかははっきりしない。
 施設は東電や原電の使用済み核燃料計5千dを金属製の専用容器に入れて最長50年間保管する計画。東電や原電の原発は東電福島第1原発事故により、1基も稼働していない。
 関電や九電など再稼働した原発のプールには使用済み核燃料がたまり続けており、満杯になれば運転が困難になる。共同利用が実現すれば、RFSに利用料が入り、経営が安定するとの考えも働いたようだ。

 方向性決まっていない 電事連

 電気事業連合会の広報担当者は10日、本紙取材に「むつ市の中間貯蔵施設を共同利用するとの方向性を決定した事実はない」とした。使用済み核燃料の対策に対しては「電気事業者としても大きな課題と認識している。適切な貯蔵、管理については地元との丁寧な対話が必要であり、引き続き信頼の確保、安心の醸成に努めていく」と述べた。, リサイクル燃料貯蔵(RFS)の親会社、東京電カホールディングスは「個別の会社として回答することは控える」、日本原子力発電は「本件については承知していない」とそれぞれ答えた。 (加藤景子)

 「筋違い」 むつ市長深いかい

 むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設を巡り、電気事業連合会(電事連)が原発を持つ各社による共同利用を検討していることについて、むつ市の宮下宗一郎市長は10日、「筋違いだ」と不快感を示した。電事連から市への接触や申し入れは「全くない」と説明した。むつ市内で報道陣の取材に答えた。
 市は、中間貯蔵施設を運営するリサイクル燃料貯蔵(RFS)に事実関係を確認。宮下市長は「RFSからは『聞いていない』と話があったので、私たちもそのように受け止めている」と語った。国に対しても、認識や事実関係などを確認する考えを示した。
 中間貯蔵施設立地に際し、RFS親会社の東京電力と日本原子力発電、県、むつ市で締結した協定に言及し「協定の外にある会社が入ってくることは、そもそもいまの時点で想定していない。立地協定からやり直すのか」と強調。「この地で行われる事業が、市の知らないところで変貌していくことは、あってはならない」と語気を強めた。
 2018年、関西電力の燃料搬入を巡る報道があった際、市は事業者への聞き取りなどの結果、「事実はない」と結論付けた。今回の電事連に関する動きについて、宮下市長は「市民がその都度不安に思い、懸念材料が増える。このような報道が繰り返され、残念に思う」と語った。
     (工藤洋平)
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