[2020_12_04_05]「立地地域の住民翻弄される」 地元町長、戸惑い 大飯原発訴訟(毎日新聞2020年12月4日)
 
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「立地地域の住民翻弄される」 地元町長、戸惑い 大飯原発訴訟

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の地元自治体は、設置許可を取り消した4日の大阪地裁判決を慎重に受け止めた。
 おおい町の中塚寛町長は2017年9月、「国の方針と姿勢が確認できた」などとして、再稼働に同意した。町は同原発を経済と財政の面で重要な存在とし、共存を図ってきた。中塚町長は「(判決の)詳細を把握しておらず、司法の判断について申し上げる立場にはないと考えるが、原子力規制委員会の判断と司法の判断が逆転する(異なる)ことは、国民並びに立地地域の住民が翻弄(ほんろう)され、憂慮すべきだと考える」とコメントし、戸惑いをにじませた。
 また、福井県の杉本達治知事は「当事者である国が責任を持って対応していくものだと思う」とのコメントを出した。【岩間理紀】

関電「到底承服できるものではない」

 大飯原発3、4号機を運転する関西電力は、補助参加人として訴訟に関わり、安全性について説明してきた。それだけに設置許可を取り消した今回の判決に衝撃を受けており、発表した談話で「極めて遺憾であり、到底承服できるものではない」といらだちをあらわにした。
 関電は大手電力会社の中でも原発に対する依存度が高い。いずれも出力118万キロワットの大飯原発3、4号機は、7基ある関電の原発のうち最も出力が大きくて新しく、最重要な原発と言える。現在は2基とも定期検査中で、3号機は2021年2月ごろ、4号機は同1月17日の再稼働を予定。控訴すれば判決の効力は直ちに生じないが、1基が停止すれば月35億円の利益が失われる計算だ。
 今回の判決は原発を巡る訴訟リスクを改めて浮き彫りにし、原発を持つ他の電力会社にも驚きをもって受け止められた。ある電力会社の幹部は「せっかく再稼働させても、裁判で運転を止められるケースが増えると、原発の存続そのものが経営上のリスクになりかねない。他の地域の同様の訴訟にも影響が危惧される」と警戒感を示した。
 同じ関電の美浜原発3号機と高浜原発1、2号機は、東京電力福島第1原発事故後にできた「原則40年、最長で延長20年」の運転期間ルールに沿って、延長のために地元の同意を得る手続きの途中だ。再稼働できれば同ルールでは国内初になるが、今回の判決が地元判断に及ぼす影響も注目される。【鈴木健太、工藤昭久】
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