[2020_11_27_07]福島第1原発事故の避難者、年収300万円未満が1.7倍に 関西学院大調査(毎日新聞2020年11月27日)
 
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福島第1原発事故の避難者、年収300万円未満が1.7倍に 関西学院大調査

 関西学院大災害復興制度研究所(兵庫県西宮市)は27日、東京電力福島第1原発事故を理由に全国各地に避難した人へのアンケート結果を発表した。事故前と事故後8年目の2019年の年間総収入(同居家族を含む)の質問で、事故前が300万円未満と答えた人は2割強だったが、19年では4割弱を占めた。高齢化に伴う年収減に加え、自主避難した母子家庭を中心に生活再建の厳しさが浮かびあがった。
 同研究所が7〜9月、全国の避難者4876人に生活再建支援拠点などを通じて質問用紙を配布し、694人が回答。回答者の震災当時の住居は福島県が522人(75・2%)だった。放射線量が高く、立ち入りが制限される帰還困難区域に住んでいたのは100人(14・4%)▽帰還できる避難指示解除区域140人(20・2%)。同県外も含む避難指示区域外からの自主避難417人(60・1%)だった。
 年間総収入では、震災前は「300万〜400万円未満」が14・8%と最多だったが、19年は「200万〜300万円未満」が16%と最多に。300万円未満でみると19年は39・1%で、震災前の22・7%から1・7倍に増えた。回答者の4割近くが60代以上で、事故後8年を経て高齢化や退職による年収減の影響もあるとみられる。
 自主避難者に限ってみると、19年の職業は事故前と比べて「専業主婦」がほぼ半減し、「臨時雇用・パート・アルバイト」が6割増えた。新型コロナウイルスの影響の設問もあり、自主避難者の1割が失業、3割が5万円以上の減収となっていた。

 ◇母子避難者の4割が年収200万円未満

 全体の16・9%を占める母子避難者117人の状況をみると、103人(9割弱)が自主避難。50人は離婚したシングルマザーで、その19年の年収は200万円未満が44%を占め、震災前の3・6倍に増えていた。
 一方、福島への帰還の意思の有無については、帰還困難、避難指示解除区域の7割近くが「戻るつもりはない」と回答。県外も含む自主避難者の4割も帰還の意向はなかった。
 調査を分析した同研究所の山中茂樹顧問は「母子避難者は二重、三重に仕事を掛け持ちする生活に追い込まれている」と指摘。「原発事故での避難時に、最低の収入を保証するベーシックインカム制度や支援のための基金を創設すべきだ」と提言した。【井上元宏】
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