[2020_11_27_05]社説:老朽原発の稼働 延長は例外のはずでは(京都新聞2020年11月27日)
 
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社説:老朽原発の稼働 延長は例外のはずでは

 安全への懸念を置き去りにしたまま再稼働させてはなるまい。
 運転開始から40年を過ぎた関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)について、同町議会が再稼働への同意を決めた。
 手続きに必要とされる地元同意の第1段階を越えたことになる。
 仮に2基が再稼働すれば、東京電力福島第1原発事故後に「運転期間は原則40年」のルールができて以降初の延長運転となる。
 ただ、延長は電力需給の逼迫(ひっぱく)などに備え、1回に限り最長20年の稼働を認める例外扱いのはずだ。
 今回の同意が例外を認めてよい事例に当たるのかどうか、安全問題も含めた厳密な検討が必要だ。
 2基は2016年に原子力規制委員会が延長を認可し、中央制御盤などを最新型に交換し、使用済み燃料プールの補強などの安全対策工事が一部で完了したという。
 だが、原発の心臓部である原子炉圧力容器が核分裂反応による中性子で劣化する程度を診断する技術は確立されていないとされる。
 外部有識者でつくる福井県原子力安全専門委員会の先月の会合でも、「原子炉が熱変化に弱くなっていないか」との声が上がり、委員長が現時点での安全性を評価できないとの見解を示している。
 原子炉内部などの状態を実際に検査することができない根本的な問題に加え、退避経路への不安が解消されないままになっている。
 町民と関電の意見交換会でも、自然災害と原子力災害が重なった場合に避難できるのかどうかを心配する声が聞かれたという。
 再稼働の条件が整っているとは言い難い。今後、福井県議会や同県知事の対応が焦点となるが、事故リスクを見極め、住民の不安を考慮して賢明に判断してほしい。
 政府の姿勢も問われている。現行のエネルギー基本計画は、原発を重要なベースロード電源とし、30年度の原子力発電の電源構成比を18年度の6%から20〜22%に引き上げる計画を掲げている。
 廃炉の対象となっていない休止中の原発を順次再稼働させ、活用することが前提だ。こうした政策をとり続けるなら、老朽原発の稼働に頼らざるを得なくなる。
 その結果、事故が起きれば、影響が及ぶ範囲は原発の地元にとどまらない。政府や再稼働に同意した立地自治体は、他地域の被害にまで責任を負えるのだろうか。
 運転期間40年の原則は、安全を考慮した歯止め策のはずだ。延長という例外規定を運転継続の理由にすげ替えるのは本末転倒だ。
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