[2020_11_17_01]柏崎市長再選 「再稼働」独り歩きは困る(新潟日報2020年11月17日)
 
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柏崎市長再選 「再稼働」独り歩きは困る

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題は県民全体にとっての課題である。選挙結果を受け、「再稼働容認」が独り歩きすることを懸念する。
 任期満了に伴う柏崎市長選は、柏崎刈羽原発の再稼働を条件付きで認める現職の桜井雅浩氏が、反対を掲げた元参院議員を破り、再選を果たした。
 柏崎刈羽7号機は原子力規制委員会による審査が全て終わり、今後は地元自治体が再稼働に同意するかどうかに焦点が移る。そうした中での選挙だった。
 ただし選挙戦では新型コロナウイルスの対応や経済の立て直しが前面に掲げられた。再稼働問題が正面から争われたとはいえず、有権者が再稼働判断を白紙委任したとは言い切れない。
 16日、柏崎市役所に登庁後、記者会見した桜井市長は「民意を把握させていただいた」との認識を示したが、新潟日報社の出口調査では、桜井氏は再稼働に否定的な層からも得票した。
 東日本大震災による東電福島第1原発事故は、重大事故が起きれば被害は広域に及ぶことを示した。
 柏崎刈羽は、福島第1原発事故の当事者である東電の原発だ。再稼働問題は県土や県民の将来に大きく影響する。
 本社のこれまでの県民世論調査では、再稼働への反対意見は根強い。再稼働問題を巡っては慎重な対応が求められる。
 気にかかるのは、花角英世知事の今後の対応だ。
 知事は再稼働論議について、県独自の「三つの検証」の終了後に始める考えを示し、「検証結果を県民に説明し、結論を取りまとめる」としている。
 県の検証では、福島事故の原因検証が終了し、他も論点整理の段階に入っている。だが、県民の意思を確認する方法は具体的に示されていない。
 求めたいのは、県民が主体的に考えるための環境づくりだ。
 検証を取りまとめる総括委員会の池内了委員長は総括委として意見をくみ上げるタウンミーティングを開く意向を示した。
 花角氏は「住民への説明や、理解を求める作業は県がやるべきことだ」との認識を示しているが、検証結果を県民に丁寧に理解してもらうためにどのような手法を取るのがベストか県民本位で考えてほしい。
 10月に行われた県の原子力防災訓練では広域避難の難しさも浮かび、住民の不安も大きい。
 高齢者らのバス移動はスムーズに行えるか、感染禍でも受け入れ自治体が避難所を十分に確保できるかなど、課題は多い。
 県内では、再稼働する際に東電が事前同意を求める自治体の範囲を巡り、半径30キロ圏に広げることを目指す議員の研究会が発足している。
 知事には、再稼働について不安や疑問を持っている県民の思いを見つめてもらいたい。
 本県では、経済産業省資源エネルギー庁長官が知事を訪ねるといった動きがある。国や東電の圧力が強まる可能性も指摘される中、「再稼働ありき」では危うい。
2020/11/17 08:31
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