[2020_11_14_01]【廃炉の現場】(6)第1部デブリ取り出し 1〜3号機総量880トン 技術開発が急務(福島民報2020年11月14日)
 
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【廃炉の現場】(6)第1部デブリ取り出し 1〜3号機総量880トン 技術開発が急務

 東京電力福島第一原発1〜3号機に残る溶融核燃料(デブリ)の総量は推計八八〇トン−。二〇一五(平成二十七)年ごろ、デブリの解析結果が明らかになると、廃炉関係者に衝撃が広がった。
 単純な比較はできないとされるが、一九七九(昭和五十四)年に炉心溶融(メルトダウン)が起きた米国のスリーマイルアイランド(TMI)原発で取り出されたデブリの重量は、この六分の一以下だった。取り出し完了に事故から十年余りの歳月を要した。

■新工法

 福島第一原発はメルトダウンの際、核燃料と一緒に圧力容器のステンレス鋼や燃料棒のジルコニウム鋼などが混ざり合い、事故前の重さの最大で四倍ほどにまで増えたとみられている。3号機のように鋼鉄製の足場や構造物の落下が確認されている原子炉もあり、重量のある構造物の撤去ができる高出力の取り出し機器や効率的な搬出技術が不可欠となっている。
 来年からの2号機のデブリ試験取り出しでは、重さ十キロほどまで持ち上げられるロボットアームが導入される。今後の取り出し量の拡大を見据え、IRIDなどは産学官連携の体制で、新工法の研究を進めている。
 その一つは原子炉格納容器の新たな貫通部に伸縮するレールを差し込む「アクセスレール工法」だ。レール上を移動する大型ロボットアームがデブリの取り出し、運び出しを担い、デブリを効率的に搬出できる利点がある。
 新たな「アクセストンネル工法」では床に接しない新たなトンネル通路を格納容器まで差し込み、ロボットが取り出したデブリの通路を通して搬出する計画だ。
 二つの手法では、作業をするための専用の建屋の増設など大掛かりな作業が求められる。建屋付近に一定の面積が必要になり、高線量の排気筒の撤去などの作業も必要になる。そのためIRIDは、建屋の代わりにデブリ搬出を担う専用の輸送台車を使う手法も検討している。

■残り3年余

 二〇一三年八月に設立されたIRIDは組織する電力会社、メーカー、研究機関など原子力事業に携わってきた「オールジャパン」の人材が集い、廃炉の技術研究の中枢を担っている。奥住直明開発計画部長は「デブリ取り出しは技術的に可能と考えている」と強調する。
 ただ、経済産業省が技術研究組合法に基づき認可したIRIDの活動期限は定款で十年と定められており、残り三年余りと迫る。期限の延長も可能とみられるが、IRIDは「現時点でどうするかは決まっていない」としている。
 県原子力安全対策課は「デブリ取り出しが進めば、作業の難度はさらに上がる。国内トップの知見を生かせる体制を存続してほしい」と求めている。
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