[2020_11_11_10]東北電力女川原発2号機再稼働“同意” 政治学の専門家「原発事故の教訓からもっと議論すべきものがあった」“新たな安全神話”への危惧も(KHB東日本放送2020年11月11日)
 
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東北電力女川原発2号機再稼働“同意” 政治学の専門家「原発事故の教訓からもっと議論すべきものがあった」“新たな安全神話”への危惧も

 東北電力女川原発2号機の再稼働をめぐる議論について、政治学の専門家に聞きました。原発事故の教訓からもっと議論すべきものがあったと指摘し、新た安全神話につながるのではないかと危惧しています。
 女川原発2号機は、東日本大震災当日、定期点検を終え、発電を再開する準備中でした。1号機と3号機は運転中でした。
 高さ14.8メートルの敷地に、約13メートルの津波が襲来。原子炉建屋の地下が浸水するなどの被害を受けましたが、外部電源が確保できたため、原子炉の冷却を続けることができ、福島第一原発のような重大事故は免れました。
 そして、東北電力は2013年12月、2号機の再稼働を目指し、原子力規制委員会に審査を申請。福島第一原発事故を踏まえ新たに作られた国の基準のもとで、約6年の審査を経て、今年2月、原発の設置にふさわしいと判断されました。
 それと同時に経済産業大臣から村井知事に対し、再稼働に向け地元の理解を求める要請が出され県内での議論が本格化しました。
 この間の村井知事の議論の進め方について、政治学が専門で東北大学の河村和徳准教授は、次のように話します。
 東北大学・河村和徳准教授「村井知事の持ち味はトップダウンというのがあって、迅速に物事を決める、意思決定をするのが売りだったと思うんですけど、今回のプロセスを見ると非常に慎重に自分の意見を積極的に出すのではなく、それぞれの意見を聞いて時間をかけていると感じるところがあります」
 河村准教授は、このように評価する一方、9日の市町村長会議に続き、11日の3者協議までの流れについて、「セレモニー的」だと受け取る人もいるだろうと指摘しています。
 東北大学・河村和徳准教授「再稼働を止めようとしている方々の思いを政治の側が政策として、より俯瞰的に、ないし波及効果を含めた形で議論できていなかった結果なのかな」
 河村准教授は、福島第一原発の事故を目の当たりにしたからこそ、もっと具体的に考え、議論できた部分があったのではないかと見ています。
 福島では、想定外の事故で原発周辺の住民が大混乱の中、避難を余儀なくされ、事故から9年8か月を迎えた今も自宅に戻れていない人がいます。
 これを教訓とすれば、事故発生時の避難対応やその後に必要となる具体的な備えについて、話し合うことができたのではないかと指摘しています。
 東北大学・河村和徳准教授「事故が起きた時、どこに受け入れて、どこに仮設住宅ないしは避難住宅みたいなものを造るのか。福島はそうやっているわけですから、残念ですけどモデルケースが存在する以上、そこの議論を深めることはできたのかな」
 そして、同じ東日本大震災で女川原発が重大事故を免れた事実が新たな「安全神話」を生み出さないか危機感を強めています。
 東北大学・河村和徳准教授「気になるのは、1千年に一度の地震を乗り切っちゃったこと。また新しい原発神話ができることが考えないといけない」
 再稼働の前提となる地元同意は、女川原発2号機が被災原発の中では初めて。さらに、福島第一原発と同じ型の沸騰水型原子炉としても全国で初めてです。
 東北大学・河村和徳准教授「(事故は)起こらないから大丈夫だよ、ではなく、起こりうるという視点からものを考えるというのを東日本大震災の教訓からいわゆる学んだ。東北電力を信頼しつつも、最悪の状態を想定するというスタンスはその時の為政者、政治に携わる人たちは持ってないといけないのかな」
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