[2020_10_19_02]「特定重大事故等対処施設」がない M7超の地震が30年以内に90%超の場所にある 地震の危険が迫る原発 老朽原発=女川原発2号機の再稼働は極めて危険 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2020年10月19日)
 
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「特定重大事故等対処施設」がない M7超の地震が30年以内に90%超の場所にある 地震の危険が迫る原発 老朽原発=女川原発2号機の再稼働は極めて危険 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 女川原発2号機の再稼働について村井嘉浩宮城県知事は、11月中にも同意すると14日の各紙で報じられた。
 宮城県議会の環境福祉委員会で11月13日に再稼働賛成の請願を採択し、本会議でも22日に再稼働が容認されるとの見通しに関連しての報道だ。
 その後、亀山紘石巻市長、須田善明女川町長からの意見聴取を行い、正式表明すると見られると、北海道新聞などが報じている。

◎これまでの経緯

 原子力規制委員会は2019年11月27日に女川原発2号機が新規制基準に適合したとする審査書案を公表、その後2020年2月26日に審査書を決定した。
 東日本大震災の被災原発としては東海第二原発に続き2例目だ。
 現在は、国内の原発で最も高い防潮堤との触れ込みで高さ29m、総延長800mを建設中だ。それだけ巨大津波に襲われるリスクが高いことが理由だ。
 新規制基準適合性審査は2013年12月から約6年かかっている。
 原発が被災したことと、太平洋沿岸部では最も地震が多発している地域に近いことも理由だ。
 女川原発に費やされた対策費は公表されただけで3400億円。2号機の建設費用(2670億円)をも超えている。
 再稼働を巡っては「女川原発再稼働の是非をみんなで決める県民投票を実現する会(みんなで決める会)」が2018年4月結成され、県民投票条例制定の直接請求署名を11万人余集めたが、県議会は3月15日に県民投票条例案を否決してしまった。知事はこれについて明確な賛否を示さなかった。

◎地震の危険が迫る原発

 女川原発は1995年7月に運転開始した沸騰水型軽水炉で82.5万キロワット。現在25年目に相当する。
 2003年5月26目宮城県沖の地震、2005年8月16日宮城県沖の地震、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震、同年4月7日宮城県沖の地震の4回で、ことごとく基準地震動を超える揺れが記録されている。現存する原発では最多だ。
 もちろんそのような事態が起きることを想定した設計にはなっていない。どこに致命的な損傷を受けているか分からない。点検で総て分かると思うのは幻想だ。
 地震調査研究推進本部は2019年2月26日、東北から関東の沖合にかけての日本海溝」沿いで今後30年以内に発生する地震の確率は、マグニチュード7.9程度の地震は平均で109年に一度発生しているから「20%程度」とした。
 ひとまわり小さいマグニチュード7から7.5程度の地震は平均で13年から15年に一度発生しているとして「90%程度」とした。 (NHKより)
 確率は実際の地震の発生を予知しないが、この一帯が近年、日本で最も多くの地震を起こしてきた地域であることは間違いない。一番近い地点にあるのが女川原発であることもまた、事実だ。 東北電力の無謀な賭けは、何のためだろうか。

◇ 防災計画は疑問だらけ

 2020年6月22日に開かれた政府の原子力防災会議で女川原発の住民避難計画が了承された。
 広域避難、被曝の防護に加え、新型コロナウイルス感染症拡大防止策も加えたとしている。

◎ 重大事故が発生した際に即時避難を求める5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)に相当する石巻市と女川町、空間放射線量率の状況に応じて避難する5〜30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に相当する登米、東松島、涌谷、美里、南三陸の合計7市町が対応するべき市町村である。
 対象住民は約19万9000人。その広域避難先は宮城県内に総て確保されたという。
◎ 新たに加えられた感染症対策は、感染者とそれ以外の人で避難車両や避難所を別にし、車両内や避難所では密集回避を求めるとされた。
 しかし避難の際、最も多くなると見られる屋内退避では、外部からの放射性物質流入による被曝を防ぐために換気は行わないこととされた。
 この場合、想定される重大事故の態様は、福島第一原発事故の時の放出放射能量の100分の1以下とされる。
 想定される放出量が100分の1以下だから影響も100分の1以下だと東北電力は言い放つ。
 ところが格納容器を守るために耐圧ベントを強行すれば、その3倍以上の放射性物質が拡散することは規制委も認めている。
◎ 女川原発の場合、重大事故発生では地震と津波の競合する確率が高い。
 つまり3.11のようなことが起こり、それが前回規模を大きく上回ることを想定しなければならない。
 その際、通常は地震・津波防災で対処するところを、原子力防災まで実施しなければならないといった困難さが加わる。
◎ 実効性がある計画とは、机上の空論ではなく現実に実施可能なものだが、この計画では実効性があるとは到底考えられない。
 退避は30キロ圏内の何処であっても不可能か、極めて困難で、女川町では前回の地震と津波で町の中心部が壊滅的被害を受けている。
◎ 仮に女川町、石巻市から脱出できたとしても、地震や津波で避難先も被災している可能性が高い。その場合、避難者を受け入れることが出来ない。
 その自治体はやむなく受け入れを拒否するだろう。避難協定書でも「避難先自治体は正当な理由がある場合を除き住民を受入れるものとする」としており、避難先自治体が被災していたら共に二次避難所に逃げるほかはない。
 福島第一原発事故でも避難所を転々としている内に大勢の命が失われたことを思い出さなければならない。

◇ 「特定重大事故等対処施設」の期限未確定

◎ 女川原発2号機には未だ「特定重大事故等対処施設(特重)」は存在しない。規制庁への申請もしていない。(設置許可変更申請が必要) これは、工事認可手続きが終わってから5年以内に完成すれば良いとされる、規制とは名ばかりの再稼働推進のために作られた「猶予」があるためだが、この工事認可手続きは未だ進行中だ。
その期限も確定していない。
◎ 河北新報の2020年7月14日付け記事によると、「工事計画」については2021年6月までに説明を終える想定を東北電力はしているという。すなわち、それまでに終わることはない。
 「特重」の期限は、予定通り進んだら2026年6月である。
万一、再稼働していても、その間に「特重」が完成しなければ運転停止になる。(川内、高浜と同じ)
◎ 女川2号機の規制基準適合性審査は、3つのプロセスのうち、基本設計を示した「設置変更許可」が2月に終わり、「工事計画」と「保安規定」が進行中だ。
 既に4月には安全対策工事の完了時期が2020年度から2022年度に遅れることを明らかにしており、「特重」についても未だ設計中としている。
 女川原発2号機は40年寿命の半分を過ぎていて残り15年。安全対策工事が終わる時点では残り13年。地震による被災も含め、
立派な老朽原発だ。
 再稼働はまだまだ、阻止できるのである。
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