[2020_09_04_01]2019年 世界を襲った自然災害(島村英紀2020年9月4日)
 
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2019年 世界を襲った自然災害

 2019年、日本では地震では誰も死ななかった。珍しい年だ。
 しかし世界の自然災害は相変わらず多い。経済的損失が10億ドル(約1090億円)以上をもたらした自然災害だけでも15件あった。英国の国際援助団体が、各国政府の公式統計や、NGOや援助団体の推計データ、科学研究やメディア報道に基づいてまとめたものだ。
 推定被害額が100億ドル(約1兆900億円)を超えた大災害も7件あった。この7件は、日本を襲った台風19号のほか、インド北部に壊滅的被害をもたらした洪水や、中国を襲った台風9号(アジア名はレキマー)、米国を襲ったハリケーン「ドリアン」、中国の洪水、米国の中西部と南部での洪水、それに最も大きな被害を出した米国カリフォルニア州での山火事だ。世界中で自然災害が起きているのである。
 台風19号は10月に日本に上陸して関東地方や甲信地方、東北地方などで記録的な大雨になって、人命、家屋などに重大な被害を与えた。被害が確認された住家は全国で96000棟を超えた。災害救助法が適用された自治体は14都県の390市区町村にも達して、東日本大震災を超えて過去最大になった。
 洪水や土砂に襲われ亡くなった人が続出した。最も人的被害が大きかったのは福島県で、死者は30名。被害が最大だったのは阿武隈(あぶくま)川流域での多くの河川が郡山市、須賀川市、本宮市、伊達市、白河市などで氾濫や決壊したためで、2階まで浸水した家屋も多かった。
 次いで人的被害が大きかったのは宮城県で19名。丸森町での死者数は11名に上った。阿武隈川の支流での破堤や支流の土砂崩れが死因だった。2019年には限らない。2018年には西日本豪雨があった。2014年にも77人の人命を奪った広島の土砂災害があった。
 ところで、この種の世界的な統計では保険がかけられていた経済的損失だけが示されているので、世界で最も貧しい人々が統計から漏れている。つまり保険がかけられていなかった損失や生産性の損失は含まれていない。このため全体の損害額が実際より低く見積もられているのである。
 たとえば2019年では、人的被害の犠牲者の圧倒的多数をインドとアフリカ南部で起きたわずか2つの災害の犠牲者が占めた。最も貧しい人々が犠牲を最も多く払っているのだ。
 ことし、2020年も世界での大規模災害がいろいろ報じられている。熊本や山形などのほか、中国や欧州など世界各地で起きている洪水などだ。今年の統計が出るのはまだ先だが、見るのが怖いくらいの数字が並ぶのに違いない。
 日本での地震は、たまたま2019年が少なかったが、静かな状態がこれからも続くわけではない。将来大きな地震が起きる可能性は必ずある。世界的に見てもそうだ。
 地震、火山、気象災害。自然災害は増えることこそあれ、長期的に減ることはあるまい。地球温暖化の影響で気象が凶暴化していて、台風や豪雨や竜巻など気象災害はいままでになく増える傾向にあるからだ。
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