[2020_08_20_06]寿都の核ごみ調査応募 隣接3町村「判断延期を」 漁協なども反対声明 北海道(毎日新聞2020年8月20日)
 
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寿都の核ごみ調査応募 隣接3町村「判断延期を」 漁協なども反対声明 北海道

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査に北海道寿都町が9月中の応募を検討していることに対し、隣接する3町村の首長は18日の非公開協議で「9月中の判断を延期し、慎重に議論する」ことなどを盛り込んだ3項目の要望を今月中にも行うことで一致した。道内では、漁協や市民団体なども声明を出すなど反対の動きが加速している。【山下智恵】

 黒松内町の鎌田満町長によると、蘭越町の金秀行町長、島牧村の藤沢克村長と18日に協議した結果、(1)検討過程について近隣自治体に情報提供する(2)近隣自治体の意思を尊重する(3)9月中の判断を延期し慎重に議論する――ことを寿都町に申し入れることにした。
 鎌田町長は、毎日新聞の取材に「風評被害による街のイメージダウンなど、影響は計り知れない。寿都町だけの問題ではなく、応募自体を再考してほしい」と述べた。
 後志管内の寿都町の応募検討が明らかになった翌14日、同管内8漁協と石狩湾漁協でつくる「小樽地区漁協組合長会」は「断固反対する」とした抗議文を決議した。2011年の東京電力福島第1原発の事故で周辺漁協が受けた風評被害を挙げ「全道の漁業に与える悪影響は計り知れない」とした。
 幌延町を中心に活動する市民団体「核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会」は18日、検討撤回を求める抗議文を寿都町に送付し、道に対しても「核抜き条例」に基づき、受け入れ拒否の姿勢を明確に示すよう求める文書を送った。
 同団体は核のごみの地層処分を研究する「幌延深地層研究センター」(幌延町)の反対運動を続ける。抗議文では「幌延でも突然の表明で地域は大混乱となり道民を分断する状況をつくった。交付金を餌に押しつけてくるのは過疎地への差別の表れ。国の都合のいい話ばかりを聞いて、短期間で町民を説得し寿都町だけで受け入れを決めることは許されない」としている。
 政党からも反対の声が上がる。立憲民主党道連は13日に「(「核抜き」を明記した)道条例との整合性も取れず、道民をはじめ、道や他自治体との議論もない」と反対声明を発表。社民党道連と市民ネットワーク北海道も18日に反対声明を発表した。
 こうした中、鈴木直道知事は18日、「(核のごみの)無害化に10万年かかり、10万年先の将来を1カ月で判断するのは拙速」などと否定的な考えを示した。
 一方、寿都町は26日に地元業界団体と、9月中旬までに町民と意見交換会を開き、9月中に決定する方針に変更はないとしている。

 ◇広範な議論が必要

 NPO法人「原子力資料情報室」の西尾漠・共同代表の話 高レベル放射性廃棄物の処分という難問を少しでも害の小さい形で解決するには、札束を見せて誘い込むようなことこそやめるべきで、調査への交付金制度は撤廃すべきだ。原子力政策(特に核燃料サイクル政策)が破綻するなかで、国民的議論と合意もないまま候補地の選定を進めることは解決につながらない。問題解決には、原子力政策や処分の安全性を含めた広範な議論が必要だ。

 ◇寿都町の文献調査を巡る道内の反応

13日 鈴木直道知事が「(核抜き)条例は順守しなければならない」と発言
    立憲民主党道連が「条例と整合性が取れず、(町外との)議論がない」と反対声明

14日 北海道反原発連合が「金で住民の安全を売り渡すもので許されない」と抗議文発表

    小樽地区漁協組合長会が「断固反対」の抗議文を決議

15日 北海道平和運動フォーラムが「農業などの産業が福島第1原発事故時のような悪影響を受ける」と反対声明

18日 核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会が、検討撤回求める抗議文を寿都町に送付

    社民党道連が「道民が願う『核のない北海道』への重大な挑戦」と反対声明

    市民ネット北海道が「次世代に負の遺産を押しつけることに他ならない」と反対声明

    寿都町の隣接3町村首長が受け入れ反対で一致
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