[2020_07_30_07]識者談話 再処理の意義大きい 奈良林直・東京工業大学特任教授(原子力安全工学) サイクルの矛盾 凝縮 上澤千尋・原子力資料情報室安全問題担当(東奥日報2020年7月30日)
 
 奈良林直・東京工業大学特任教授(原子力安全工学) 東芝勤務時代、再処理工場の安全性を高めるための一部研究に関わった。試運転や新規制基準の審査を経て、稼働が視野に入ってきたことは感慨深い。
 再処理工場は原発5、6基分に相当する、巨大で複雑なシステム。グレーデッド・アプローチ(リスクの大きさと特徴に応じた規制)の考え方が大切で、リスク管理を徹底し、重要度分類をした上で本当に大事な部分をしっかり見ることが求められる。その大事な部分を、洞察力を持って見抜く人材の育成を事業者にも規制側にも要求したい。
 今後の課題は運転の習熟と工場の保全活動だ。安全対策工事や運転でもトラブルを起こさないよう気を引き締めなければならない。
 人類の歴史の中でいずれ化石燃料は不足する。再処理で取り出したプルトニウムを燃料として有効に使うことが将来にわたって必要だ。最終的な廃棄物となるガラス固化体は、使用済み核燃料を直接処分するのに比べ、廃棄物の量が少なく管理期間も短縮される。再処理の意義は大きい。
 上澤千尋・原子力資料情報室安全問題担当 議論は不十分で、決着がついていない論点が残されている。地震・活断層問題では、研究者が指摘する(下北半島東方沖の)大陸棚外縁断層と(派生断層で、再処理工場直下にあるとする)六ケ所断層について、事業者の評価が研究者の主張に反論し切れていない。基準地震動は700ガルに引き上げられたが、これらの断層を考慮すれば、より大きな地震を想定する必要がある。
 再処理工場はアクティブ試験(最終試運転)開始から10年以上が経過し、施設全体の劣化や老朽化が懸念される。劣化を踏まえた耐震評価ができているかも疑わしい。航空機落下の問題は、確率の評価を工夫して規制側が判定基準を甘くしたとしかみえない。
 事業者の対応も不備が多く、実際に許可を得た内容を実践できるか疑問だ。
 六ヶ所には核燃料サイクルの矛盾が凝縮している。全ての使用済み核燃料を再処理するとの方針が問題を難しくしている。プルトニウムを消費できる見通しもない。まずは原発を稼働させないことが重要だ。
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