[2020_07_22_03]東海第2原発、避難計画の見直し検討 「3密」回避でバス2〜3倍必要 茨城県(毎日新聞2020年7月22日)
 
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東海第2原発、避難計画の見直し検討 「3密」回避でバス2〜3倍必要 茨城県

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、茨城県は、日本原子力発電東海第2原発(同県東海村)の事故に備えた県広域避難計画を見直す検討を始めた。感染症対策の観点から、住民の避難バスの確保に最も影響が出る見通しで、車内の「3密」を避けるため、県はバスの必要台数が従来想定の約2〜3倍に膨らむと試算している。【韮澤琴音、安藤いく子】 見直しの検討対象は、避難方法の一部。現状の計画では、自力の避難が難しい高齢者や障害者などの要支援者や自家用車を持たない住民らはバスなどで避難する。しかし、車内で3密(密閉、密集、密接)を避けるためには1台約50人の定員を半数以下に減らし、台数を大幅に増やす必要がある。
 原子力防災対策が必要となる東海第2から30キロ圏内に住む住民は全国最多の約94万人。このうち事故時にバス移動が必要となる人は14万〜15万人に上り、現行の計画では、避難には約3000台の確保が必要と試算している。
 県は、県内のバス会社から全面的な協力が得られれば必要台数を確保できるとしていたが、県や原発から30キロ圏内の自治体の担当者は、感染対策を講じながらバスで住民を避難させるには「計画より2〜3倍の台数が必要」と見込んでいる。
 県が計画の見直しを検討し始めた背景には、内閣府が6月、感染症流行下での原発事故時の住民避難は、感染拡大と住民の被ばくの双方を避ける方針を示したことがある。
 内閣府が示した「基本的な考え方」では、自宅などで屋内退避を行う場合は、放射性物質による被ばくを避けるため、屋内退避の指示が出ている間は原則換気を行わないなどの対策が必要としている。感染症対策を盛り込んだ原発の避難計画は、政府が6月に東北電力女川原発(宮城県)の計画を初めて了承し、茨城県もこれを参考にしている。
 県原子力安全対策課は「新型コロナの感染拡大で、避難計画には感染症対策が求められる。避難時の感染防護策は必要だ」としている。すでに避難計画を策定済みの30キロ圏内5市町の一部も計画を見直す方向で準備を進めている。

 ◇必要台数確保は困難 コロナで経営不振影響 バス会社

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県は感染症流行下の住民避難で必要なバスの台数を大幅に増やす検討を始めた。避難者の感染防止のためだが、県バス協会との協力協定は未締結の状況が続く。感染拡大の影響で経営不振に陥ったバス会社からは「増強は不可能」との声もあり、必要台数の確保は困難な状況となっている。
 「感染症流行前から、避難車両の確保は課題だ」。県の担当者はこう話し、住民の避難バス確保は計画に実効性を持たせる上で大きな課題となっていることを明かした。
 現状の計画では、東海第2の事故時に即時避難となる原発5キロ圏内の東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市だけでも約400〜500台のバスが必要としている。30キロ圏内に3万6000人が住む常陸大宮市では対象地域で車を持たない人は約5000人、避難に必要なバスは約100台と試算。県全体では約3000台を用意しなければならない。
 しかし、県バス協会などによると、地域ごとに必要なバスの台数や運転手の安全確保のための対策など、協力に必要な条件が示されていないため、バスの確保は困難となっているのが現状だ。
 さらにバス内で3密を避けるには、台数を増やして1台の定員を半数以下に減らす必要がある。必要台数は約2〜3倍に膨らみ、バスの確保はさらに困難になる。県の担当者は「感染対策を導入すれば、バスの確保はさらにハードルが高くなる」と頭を抱える。
 また、新型コロナウイルスの感染拡大により、観光業には大きな影響が出ている。需要の減少で遠足に使われる貸し切りバスを休車し、経営が落ち込んでいるバス会社も多い。
 休車措置をとっているバスは、事故を防ぐために必要な3カ月点検や車検を実施していないため、仮にこの状況が続いた場合、バス会社は保有するバスを売却することも考えられる。
 3台のバスを手放した常陸大宮市内のバス会社の男性社長は「感染拡大前から協力できるか分からなかった。2〜3倍の数を用意しろと言われても不可能だ」と話した。見直される避難計画に実効性を持たせられるか、不透明な状況だ。
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