[2020_06_25_14]関西電力株主総会終了 取締役過半数を「社外」など議案可決(NHK2020年6月25日)
 
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関西電力株主総会終了 取締役過半数を「社外」など議案可決

 巨額の金品受領問題など、不祥事が相次ぐ関西電力は25日、株主総会を開きました。取締役の過半数を社外の人材とする新たな経営陣が承認される一方、株主からは厳しい批判が相次ぎました。
 関西電力は午前10時から大阪市内で株主総会を開き、320人余りの株主が出席しました。
 総会の冒頭、森本孝社長は一連の不祥事について謝罪しました。
 関西電力は、元経営幹部らが原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から巨額の金品を受け取っていたほか、減額した役員の報酬をあとでひそかに補填(ほてん)するなど、次々と不祥事が明るみに出ています。
 出席した株主からは「関西電力は表と裏で全く違うことをしている」とか「黒字になったとたんに電気料金を値下げすることなく、真っ先に自分たちの報酬を補填した。恥ずかしくないのか」など、厳しい批判が相次ぎました。
 また筆頭株主の大阪市は、すべての役員の個別の報酬を開示するよう定款の変更を求めましたが否決されました。
 25日の総会では、取締役13人のうち過半数の8人を社外の人材とする新たな経営陣の選任や、経営のチェック機能を高める目的で人事や報酬などを社外取締役が中心になって決める「指名委員会等設置会社」への移行など、会社の議案が賛成多数で可決されました。

「指名委員会等設置会社」とは

 「指名委員会等設置会社」とは、社外取締役が中心となって会社の経営をチェックする機能を高めることを目的とした会社の形態です。
 この中では、取締役が指名委員会、監査委員会、報酬委員会という3つの委員会のメンバーとなって会社の人事や報酬などを決定しますが、各委員会ではメンバーの過半数が社外取締役であることが求められます。
 また、会社を監督する機能と業務の執行を分けている点にも特徴があります。
 取締役会は、経営を監督し、取締役会が選んだ執行役が日々の業務を行います。
 これまでの関西電力は、従来型の株式会社で、取締役会が業務を執行し、それを監査役が監督する仕組みでしたが、監査役は金品受領問題などの不祥事を防ぐことはできませんでした。
 「指名委員会等設置会社」をめぐっては、日産自動車がカルロス・ゴーン元会長の逮捕によってガバナンス強化のために去年6月に導入しました。

総会で提出 議案の可否は

 25日の株主総会で、関西電力は「東レ」の会長や経団連会長をつとめた榊原定征氏の会長への就任や、森本孝社長の再任など13人を取締役に選任する議案を出しました。取締役13人のうち過半数の8人を社外の人材としています。
 また、経営のチェック機能を高めるため社外取締役を中心に人事や報酬などを決める「指名委員会等設置会社」に移行する議案も出しました。
 これら会社側の議案は賛成多数で可決されました。
 一方、株主側からは、工事発注のプロセスが不透明だったことが金品受領問題につながったとして入札の透明性を確保し、不正を防止する措置を講じることを求める議案が提出されていました。
 また、相談役や顧問、それに嘱託の役職を廃止することを求める議案も出ていました。
 このほか、筆頭株主である大阪市は、社会からの信頼を回復するため経営に関する情報を原則すべて開示することや、今後、取締役退任後に嘱託についた場合の報酬額を個別に開示するよう、定款を変更することを求めていました。
総会で株主側の提案はすべて否決されました。

関電 森本社長「透明性高い事業活動に努める」

 株主総会後の記者会見で、関西電力の森本孝社長は「外部の客観的な視点を重視した実効性の高いガバナンスの実現に向けて新たなスタートを切ることができた。社会の皆様に約束したように透明性の高い事業活動に努めていきたい」と述べました。

企業統治の専門家「積極的に情報公開を」

 企業統治が専門の近畿大学経営学部の芳澤輝泰准教授は、25日の株主総会での決定について「取締役と執行役が分離し、新しい経営体制に移行することは評価できる。しかし、実際には取締役が執行役を兼任することはできるし、過去には指名委員会等設置会社となっていた東芝が不正会計を行ったケースもあり、制度として完全とは言えない。最も重要なことは重要な立場に就く人間の、人としての倫理教育を行っていくことだ」と述べました。
 また「会社としてきちんとした情報が上がってこないと監査の機能も十分に果たせないので積極的に情報公開を行うべきだ。例えばきょうの総会で大阪市から提案があったすべての役員の報酬の開示も実現すべきだったと思う」と話していました。

出席した株主からは厳しい声

 関西電力の株主総会に出席した株主からは厳しい声が聞かれました。
 50代の女性は「質問に対する答えはペーパーを読んでいるだけで、ちぐはぐな印象を受けた。不祥事については、隠れている部分がもっとあると思うので、うみを出し切ってほしい」と話していました。
 また、男性は「金品を受け取っていた問題について、元役員らをもっと追及してほしいと思う」と話していました。
 別の男性は「新型コロナウイルスを理由にして株主が意見を言いにくい状態になっていると思った。株主の提案説明に与えられている時間が1分では趣旨を十分伝えられない。総会をなんとか乗り切ろうとする意図を感じた」と話していました。
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