[2020_06_03_01]除染なしでも「避難指示」解除可能に 政府が要件緩和へ 福島第1原発事故(毎日新聞2020年6月3日)
 
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除染なしでも「避難指示」解除可能に 政府が要件緩和へ 福島第1原発事故

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が現在も続く福島県内の帰還困難区域について、除染が実施されていなくても避難指示を解除できるよう要件を見直す方向で政府が最終調整に入った。放射線量が低減し、地元が解除を要望している地域を想定している。自治体ごとに復興の進捗(しんちょく)状況が異なる中、地域再生の選択肢を広げる構えだ。今夏にも結論を出す。
 原発事故によって人の立ち入りが制限されている帰還困難区域は、福島県の7市町村約337平方キロにある。このうち約27・5平方キロは、国が認定する「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)として除染やインフラ整備が集中的に実施され、住民の帰還を進めようと避難指示解除の準備が進む。だが、残る9割以上の区域は復興拠点から外れ、国はほとんど除染をしていない。費用が膨大で廃棄物の処理も課題になるからだ。
 これに対し、現行の避難指示解除の要件は▽年間の被ばく放射線量が20ミリシーベルト以下▽日常生活に必要なインフラの整備や十分な除染▽自治体や住民との協議――と原子力災害対策本部(本部長・安倍晋三首相)が決めている。原発事故から9年が過ぎて放射線量は減ってきているものの、除染が行われていない復興拠点外では避難指示解除の見通しが立っていなかった。
 政府は今回、復興拠点の避難指示解除については従来の3要件を維持する一方、拠点外では除染とインフラ整備について緩和した要件で解除できるよう検討している。ただし、住民や自治体の中には必ず除染を実施すべきだとの考えもあることから、新要件での解除は地元の要望がある場合に限る。どちらを選んでも居住などの制限はない見通し。
 今後、政府内で新要件の内容について調整を進めた上で、除染せずに避難指示を解除した場合の安全性を原子力規制委員会で議論する。そして今夏にも原子力災害対策本部を開催し、結論を出すという。
 帰還困難区域がある7市町村のうち飯舘(いいたて)村は2月、復興拠点の避難指示解除が予定される23年に、拠点外も含めて一括解除をするよう国に要望。拠点外に「村営復興公園を整備する」としている。5月には与党の東日本大震災復興加速化本部が拠点外について、自治体の意向に沿って土地利用ができるよう新たな制度設計を政府に申し入れていた。【高橋隆輔】

 ◇ことば「帰還困難区域」

 東京電力福島第1原発事故で2013年までに3区分された避難区域のうち、当時見込まれた年間の被ばく放射線量が最も高い50ミリシーベルト超とされた地域。福島県の南相馬市、飯舘村、葛尾村、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町の7市町村の約337平方キロを政府が指定した。このうち南相馬市を除く6町村の約27・5平方キロで特定復興再生拠点区域を整備しており、同区域では22〜23年の避難指示解除を目指している。
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