[2020_05_24_01][新型コロナ対策] 原子力業界 感染防止へ緊張感 往来制限や動線確保(茨城新聞クロスアイ2020年5月24日)
 
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[新型コロナ対策] 原子力業界 感染防止へ緊張感 往来制限や動線確保

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、原子力業界も感染予防対策に追われている。原子力施設でひとたび感染が広まれば、保安体制の脅威になるからだ。規制機関と事業者の双方が足並みをそろえ、動線確保で人との接触を減らしたり、感染者の多い首都圏から茨城県を含む立地自治体への往来を制限したりと、同ウイルスを持ち込まないための対策に力を入れている。
 「とにかくサイト(原子力施設敷地)に(ウイルスを)持ち込まないことだ」
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は4月の定例会見で、新型コロナ対策をこう強調した。
 規制委は4月から、原子力施設の審査をはじめとする会合全般をテレビ会議方式で行っている。規制委側は東京の会議室で、事業者側は現地に残ったまま、モニターを通じてやりとりする。一般傍聴は中止し、ネット中継の視聴に限定した。感染者の多い首都圏から地方の原子力施設にウイルスが運ばれるのを防ぐ狙いだ。
 原子力規制庁職員が出向く検査の運用も見直した。原発の再稼働前などに同庁の検査官が現地に入る「使用前検査」は、極力出張させない方針を決めた。
 記録確認は同庁で実施し、現地確認は駐在事務所の職員を活用する。出張が必要な場合にも、万一の感染に備え、検査前の2週間は現地近くで滞在し、健康観察することにした。
 東海村の日本原子力発電(原電)東海第2原発でも今月15日から使用前検査が始まり、原電と規制委は具体的な運用方法を協議している。東海第2では現在、新規制基準による安全対策工事が進む。同じ敷地にある東海原発の廃炉作業と合わせ、社員や協力会社従業員を含め約1700人が出入りしている。
 原電も感染防止に努めている。社員や協力会社は首都圏との往来を原則禁止した。また首都圏からの作業員は工事に従事させず、やむを得ず携わる場合も2週間待機させて健康観察する。さらにテレワークや交代勤務に加え、原発運転員とそれ以外の関係者が近づかないよう動線を分け、接触を減らしている。
 一方、他県の原発では感染者を出した事例もあり、感染拡大防止のため、東海第2の安全対策工事を中止するよう求める声も上がっている。原電の担当者は「感染防止対策を十分講じた上で原発の安全確保業務を行っている。安全性向上対策工事もその一環で、引き続き感染防止対策を講じたい」とコメントした。
 同村と大洗町に原子力施設を持つ日本原子力研究開発機構(原子力機構)も在宅勤務を導入した。
 原電と原子力機構によると、これまでに業務に関わる関係者で感染者は発生していないという。
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