[2020_05_18_04]曲折の6年 再処理「合格」 (5)地震審査 断層評価慎重に 追加調査求める声も(東奥日報2020年5月18日)
 
 6年4カ月に及んだ六ヶ所再処理工場の安全審査。設備の審議と並行して、自然事象について議論する地震・津波分野の会合は、計44回開かれた。
 断層評価は、設計や安全確認の基準となる地震の揺れ(基準地震動)に関わるため、重要な審査項目の一つとなる。原子力規制委員会が今回、最も重視したのは、敷地から最短で約4キロの位置にあU、北東部を南北に走る活断層「出戸西方断層」だった。当初は北端・南端となる地点の根拠が乏しく、規制委は日本原燃にデータの精査を要求。2019年3月には、新たな文献が出たことなどから再度、両端の調査データを充実させるよう求めた。
 この断層は、地震が起きた場合に敷地に最も大きな揺れをもたらすとされ、規制委は特に、敷地に近い南端を「非常に気を使って審査した」(原子力規制庁幹部)。原燃は総延長約420メートル、深さ最大10メートルの巨大なトレンチ(試掘溝)を掘り、さらには追加で行ったボーリング調査で、南端の位置を確認した。審査の過程では、北端も北側にずれたため、最終的な長さは約11キロに延びた。
 原燃は、出戸西方断層を対象に「不確かさ」を組み合わせて揺れを算定、他の検討結果と合わせて、基準地震動を最大加速度700ガル(ガルは加速度の単位)と評価した。規制委もこれを「妥当」とした。
 一方、日本各地にある原発の立地地点で、断層を巡る論争がやまない。
 事業者は建設時、巨費を投じて膨大な調査を行い、各種の根拠を積み上げて断層評価を固める。しかし、事業者が長年。「問題ない」としていた評価が、後の調査で覆った実例もある。専門家の間でも、活断層の認定や活動性を巡って見解が対立することがあり、「断層」は古くて新しい問題といえる。
 下北半島にも、複数の論争が決着しないまま残る。
 今回、原燃は下北東方沖の「大陸棚外縁断層」に関し、活動時期を13万〜12万年前以降と規定する活断層には該当しないとして「考慮する活断層」に含めなかった。原燃など4事業者は15年、調査や第三者委員会の意見を踏まえ「活動は少なくとも約25万年前に終了した」と既に結論付けていた。
 この断層は、以前から一部の研究者が「巨大地震を引き起こす可能性がある」と主張していた。ある研究者は、この学説と4事業者の調査結果を照らし「学説を否定できていない」と指摘、六ヶ所周辺の活断層認定に対して疑義を唱える。
 別の研究者も「仮にこの断層が動いていないとしたら、下北半島を25万年前以降に隆起させているメカニズムをどう説明するのか」と、さらなる調査が必要では一と疑問を投げ掛けた。
 審査ではほかに、津波に関して、シミュレーションした大地震による津波が標高約50メートルの敷地に到達しないことなどから「影響を考慮しない」とした。火山事象は、敷地に降り積もる火山灰の厚さを、かつて八甲田山系の噴火で堆積した「甲地軽石」(約28万〜18万年前)を基準に検討し、最大55センチと設定した。
 規制委が原燃の安全対策を了承した13日、審査を担当した石渡明委員は「出戸西方断層の両端は詳しく地質調査し、成果が出た。火山灰の厚さも大きく増やした」と述べ、追加で指示した調査により審議内容が深まったことを評価した。
     (加藤景子)
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