[2020_05_14_12]曲折の6年 再処理「合格」 (1)悲願 出発点 高揚感なし 稼働時期見通せず(東奥日報2020年5月14日)
 
 13日正午すぎ、六ヶ所村の日本原燃社内の一角。社員らがインターネット配信の動画を通じ、原子力規制委員会の審議を見守っていた。
 委員5人が六ヶ所再処理工場の「審査書案」を了承した瞬間。ある社員は「良かった」と小さくつぷやいた。しかし、拍手をしたり喜びをあらわにする人は一人もいなかった。「これで終わった訳ではない」。悲願を達成したはずの原燃だが、高揚感はなかった。
 「再処理工場が完工し操業し、40年間安全に運転をするところまでが私たちの事業。審査合格はスタート地点でしかない」。増田尚宏社長も4月末の会見で認識をこう語っていた。
 再処理工場は、工場の使用前に行う国の検査・確認にすべて合格した時点で「完工」となるが、2006年に始まった最終試運転の終盤で検査は中断、工場の進捗率は長らく完工の直前で止まったままだ。
 ただ今回、安全審査をクリアしたことで、完工が視野に入ってきたことは確かだ。
 原燃が打ち出した各種の安全対策が審査で認められたことで、今後は膨大な量の工事が行われる。多様な事故に対応するため、数年前に完成したばかりの緊急時対策施設を建て替えるほか、2万立方メートルの冷却水をためる貯水槽も2基新設する方針だ。
 安全対策に関わる工事に着手するには、規制委から「設計・工事の方法の認可」を得る必要がある。原燃によると、認可にかかる書類は現時点で約6万ページ。「認可の審査を効率的に進めることができるよう、これまで原子力規制庁と話し合いを進めてきた。工事も効率的に行いたい」とするが、本年度中とする工事終了目標は達成が極めて厳しい状況だ。
 敷地内では準備工事が先行し、村内にも「余してしまうくらい」(同村の企業関係者)の仕事が流れる。一方、「目標必達」の陰で現場に負荷がかかっているーとこの関係者は語る。「24時間、交代勤務で作業できないかと元請け業者から要望がある。ただ、いさトラブルや労災が起きれば現場は1カ月止まる。人手不足もあり、要求となかなか折り合いが付かない」
 認可の審査や工事に要する時間は不確定で、既に多くの関係者は「21年度上期」の完工目標に対し「延期は必至」とみる。
 増田社長は「簡単でないことは確か」と認めつつも、「21年度上期」の旗は降ろしていない。原燃は、新たな工程を「正式」合格後に示す」との意向だが、その後の稼働時期はさらに見通せない状況だ。(加藤景子)

    ◇    

 原子力規制委員会が13日、日本原燃・六ケ所再処理工場について事実上の合格証となる一「審査書案」をとりまとめた。公開で行われた審査会合は113回。原燃が審査を申請してから6年4カ月がたった。紆余曲折の歳月を振り返る。
KEY_WORD:ROKKA_: