[2020_05_13_01]21年度上期完工「不可能」 再処理工場で規制庁(東奥日報2020年5月13日)
 
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21年度上期完工「不可能」 再処理工場で規制庁

 原子力規制委員会の更田豊志委員長は13日、日本原燃・六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)の安全審査を事実上合格とした会合後の記者会見で、今後控える工事認可の審査や完成前の検査を念頭に「極めて長い時間がかかる懸念を持っている」と述べた。原燃は2021年度上期の完工を目標に掲げているが、原子力規制庁の幹部は「不可能だろう」との認識を示した。
 正式合格は夏以降を見込む。安全審査で原燃は、耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」を申請時の600ガルから700ガルに引き上げた。津波は標高40メートル以上に位置する敷地には到達しない−との結論を出した。
 再処理工場は工程ごとに建屋が分かれるため、原発と異なって放射性物質が面的に広く分布する。機器の数も多い。高レベル廃液の沸騰など6種類の重大事故を中心に、放出される放射性物質の低減や影響を抑える対策の議論を重ねた。使用済み核燃料は放射性物質や発熱の量を減らすため、処理するまでの冷却期間を従来の「4年以上」から「15年以上」に変更した。
 パブリックコメント(意見公募)や経済産業相らへの意見聴取を経て、正式合格となる。原燃は規制委から「設計・工事の方法の認可」(設工認)を受けた上で、耐震補強や重大事故対策といった本格的な工事に入る。
 規制庁は設工認の審査に「最低1年ぐらい」(審査チーム)を要すると指摘。さらに完成する前に実施する検査・確認もあり、原燃の完工目標は「不可能だろうという見通しが立っている」(幹部)とした。
 1993年の着工後、原燃はこれまで完工目標の延期を23回(「未定」の届け出を除く)繰り返してきた。安全審査の申請から約6年4カ月。審議の長期化がまたもや完工の目標時期に影を落としつつある。
 再処理工場は規制委にとって先例のない審査で、新たな知見への対応や審査方針・体制の変更もあって時間を要した。一方で、原燃の審査に対する理解不足や管理体制の不備が、審査の停滞をたびたび招いた。
 17年には建屋への雨水流入や、14年間に及ぶ設備の未点検が発覚。半年間、審査が中断した。終盤は安全対策の検討不足を再三指摘され、説明の不備や重要書類の再提出を繰り返した。
 原燃が目指す完工まで残り1年数カ月だが、更田委員長は「アンビシャス(野心的)。なかなか難しいだろう」と表現。「どれだけ念入りな計画を原燃が立てられるかが非常に大きく関わる」と述べた。

▼大きなステップ/三村申吾知事

 事業変更許可へ向けた大きなステップと受け止めている。今後、審査書案に対する科学的・技術的意見の募集、原子力委員会および経済産業大臣への意見聴取などの手続きが残されていることから、県としては引き続き、国の対応状況を注視する。

▼確実に対策反映/日本原燃・増田尚宏社長

 審査書案が了承されたことは当社として大きな前進であり、引き続き、審査合格に向けて全力で取り組む。適合性審査で約束した安全性向上対策を確実に現場に反映し、地域の皆さまにご安心していただける再処理工場を作り上げていく。
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