[2020_05_01_01]被災したらパン作り、カセットコンロの備えを(島村英紀2020年5月1日)
 
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被災したらパン作り、カセットコンロの備えを

 地震のときにインターネットの検索データを調べると、興味深いことが分かった。
 地震は2018年9月に起きたマグニチュード(M)6.7の北海道胆振(いぶり)東部地震。最大震度は北海道で初めての7だった。震源から75キロ以内、つまり震度5弱以上だった地域のデータを調べた。大都会札幌はこの範囲に入る。
 地震発生当日、どんなキーワードでレシピを検索したかという調査では「ご飯」「鍋」「土鍋でご飯」「白米」「炊き方」というワードが上位5位を占めていた。北海道全域で大規模停電(ブラックアウト)が起きて、電気炊飯器が使えなくなったために土鍋などを使ってコメを炊く方法が検索されたのだろう。
 しかし、地震の2日後以降にはレシピの検索ワードの2位に「パン」がランクインした。1位は「簡単」というワードだった。一方「ご飯」「白米」などはランク外に落ちた。
 これは停電でパンの生産と入荷が止まり、店で品薄になったことと関係している。
 このほか「ベーキングパウダーなし」「ホームベーカリー」「手捏(こ)ねパン」などのワードも急上昇した。また、「パン」と合わせて検索されていたワードとしては「フライパン」「牛乳なし」などだった。
 売っているコメは品切れになったし、農家などではコメを玄米として備蓄している家庭も多く、停電で精米機を動かせなければコメがないのと同じだった。
 そのためご飯の代わりにパンを作ろうと考えたのだろう。
 じつはパンは卓上カセットコンロさえあればフライパンでできる。イタリア料理の平たいパン「フォカッチャ」だ。フラットブレッドの一種である。卓上カセットコンロを持っている家は多く、なかでもアウトドア活動が盛んな北海道ではとくに普及率が高い。
 パンはコメに比べて少ない水で作ることができる。コメは、無洗米は別だが、炊く前に水を使ってとがねばならず、水道が止まってしまうとペットボトルの貴重な水を多量に使って捨てなければ、つまり「浪費」しなければならない。
 ところで、地震のあとでライフラインの復旧には早い遅いがある。阪神淡路大震災(1995年)では電気、電話線、水道、ガスの順に時間がかかった。水道やガスは地中管に損傷があると危険だから、掘り返して調べなければならない。復旧に時間がかかる。阪神淡路大震災の場合には、ガスの完全復旧には3ヶ月もかかった。水道も完全回復するのに2ヶ月半もかかった。
 最速の電気さえ、数日かかる。げんに阪神淡路大震災では電気が完全に復旧したのは6日後だった。地震に備えておくにはカセットコンロは必要だろう。
 他方、食材は種類と量を備蓄しておくだけでは不十分なのだ。
 「電気が止まった場合」「水道が止まった場合」などライフラインが止まっている状態に応じて、調理して食べられるように、それぞれの備えが必要なのである。
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