[2020_04_22_06]巨大地震「切迫状況」(毎日新聞2020年4月22日)
 「発生頻度は低いが最大クラスの想定だ。しっかり命を守る避難計画に生かしてもらいたい」。内閣府の.検討会の委員として想定作成に携わった今村文彦・東北大教授は、そう強調する。
 公表されたのは、岩手県沖以北の日本海溝北部から北海道沖の千島海溝に沿った領域を震源とする地震の津波だ。この領域では陸側プレートの下に太平洋プレ−トが沈み込み、プレート間やプレート内部で起こる地震、火山による地震など多様な地震が発生してきた。慶長三陸地震(1611年)や明治三陸地震(1896年)など、揺れに比べて巨大な津波が発生する「津波地震」も起こっている。
 ただ、一定の間隔で地震を繰り返したことが古文書などの記録で残る南海トラフ巨大地震とは異なり、東北から北海道の太平洋沿岸地域ではこうした記録が不足し、津波想定には困難な面もあったという。
 そこで、過去の津波で運ばれた土砂などの堆積物に着目し、津波や、津波を引き起こす巨大地震を推定した。
 具体的には、岩手県から北方領土の沿岸で、過去6000年間の津波堆積物を調査。海岸からの距離や標高、地形などから津波の大きさを割り出し、その津波を起こす地震を解析して最大地震を導き出した。
 その推定では「東日本大震災や南海トラフ巨大地震を上回る規模の地震が起きる可能性があるとの結果になった。千島海溝地震については政府の地震調査委員会が2017年に公表した長期評価で、マグニチュード(M)9級の超巨大地震の発生確率を30年以内で7〜40%としている。
 北海道から東北では、12〜13世紀、17世紀に発生した巨大地震が、最大クラスの津波を伴う地震だったとみられている。その間隔は約300〜400年で、今回の想定を作成した関係者は「千島海溝でも日本海溝でも、最大クラスの津波を起こす巨大地震の発生が切迫している状況にあるのには変わりない」と指摘、備えを怠らないよう訴える。
【三股智子】
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