[2020_03_13_04]再稼働反対区長に「改善」文書 笠間市、署名活動圧力か 東海第二(東京新聞2020年3月13日)
 
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再稼働反対区長に「改善」文書 笠間市、署名活動圧力か 東海第二

 日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)から三十キロ圏に入る同県笠間市で、再稼働反対の署名活動をした行政区の代表に対し、市が文書で活動の「改善」を求めていたことが分かった。圧力とも受け取れるが、市は圧力の意図を否定。識者は市の対応を疑問視する。
 市から「改善」を求められたのは、笠間市南友部(みなみともべ)区長会の山口裕代表(68)。区長会は、市東部の南友部地区にある複数の行政区長で構成している。
 山口代表らは昨年、住民から署名千五百二十一筆を集め、再稼働反対の意見書を出すよう市議会に求める請願を提出。だが、十二月に不採択となった。
 区長会は今年一月、再稼働に事前同意が必要な水戸市を訪れ、田尻充副市長に再稼働反対の意思を伝えた。この動きを本紙茨城版で報じたところ、笠間市職員が山口伸樹市長名の文書を代表に持参したという。
 文書では、記事の見出しが「笠間の区長会」となっていたことから、「笠間市区長会の総意で再稼働反対をしているのではないかと誤解される」としている。
 さらに「区長の身分は市の非常勤特別職という公務員扱い」であり、「その地位を利用しての運動等は芳しくない」と説明。その具体例として「地区を二分するような活動」「思想活動」を挙げている。
 山口さんは「自分たちの命が原発に脅かされる思いから活動していることに対し、『芳しくない』というあいまいな言葉で圧力をかけている」と訴えた。
 市総務課は「南友部地区以外の区長から『市区長会全体で活動していると誤解される』と連絡が複数あったので、誤解されないよう気を付けてほしいと伝えた」と話し、「圧力ではない」と否定した。
 行政区長は自治体の首長から委嘱され、回覧板を回したり、住民の要望を自治体に伝えたりする。
 成蹊大法科大学院の武田真一郎教授(行政法)は、公務員の政治活動を禁止する地方公務員法は区長のような特別職には適用されないとし、「市長名でこのような文書を交付すれば圧力にほかならない」と指摘。「原発再稼働など特定の問題に個人の意見を有するのは当然だ。住民代表として公正に住民の意見を集約するのであれば何ら問題はない」と強調した。
 東海第二原発の再稼働は東海村や水戸市など周辺六市村の首長の事前同意が必要。笠間市は対象外だが、市域の一部が三十キロ圏内のため、原発事故時の広域避難計画策定が義務付けられている。 (松村真一郎)
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