[2019_10_25_02]仮置き場の除染土流出相次ぐ 福島県、早期搬出呼び掛け(河北新報2019年10月25日)
 
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仮置き場の除染土流出相次ぐ 福島県、早期搬出呼び掛け

 台風19号に伴う河川の氾濫により福島県内では、東京電力福島第1原発事故の除染で発生した廃棄物を収める大型土のう(フレコンバッグ)が流出する事故が相次いだ。現場は除染廃棄物を一時的に保管する仮置き場で、十分な防災対策を施せていないことが災いした。県は危険箇所からの早期搬出を市町村に呼び掛ける方針だ。(福島総局・神田一道)
 川沿いの地盤が大きくえぐられ、一部には亀裂も走る。福島県川内村下川内にある手古岡(てこおか)仮置き場。くいやロープはなぎ倒されたままで、未曽有の濁流の爪痕が生々しく残る。
 県内には、除染で生じた土や草木が収められた土のう(1立方メートル)が仮置き場に山積みされている。今回の台風で田村、二本松両市と川内、飯舘両村の仮置き場から合わせて50袋超が流出した。
 手古岡もその一つ。近くを流れる滑津川の氾濫で少なくとも19袋が流され、村が回収できた3袋のうちの2袋は中身が流れ出たとみられ、空だった。
 仮置き場を管理する村は台風が襲来する前の今月9日ごろに現場を点検。土のう約2600個の山は滑津川から2メートル以上離れていることを確認した。
 「地盤を2メートルも削る激流が押し寄せるとは…。まさに想定外だ」と村の担当者は言う。村は未回収の土のうの捜索と併せて、安全な山側に土のうを移す作業にも着手する。
 田村市都路町の仮置き場でも20袋以上が流出。近くに住む女性(72)は「放射性物質が入っている袋が川に流出するのは気持ちが悪い。まずは早く搬出してもらいたい」と話す。
 同様の流出事故は2015年9月にもあり、当時は豪雨によって福島県飯舘村の水田から448袋が流れ出た。事故を受け環境省と県はマニュアルや指針を改定して監視態勢を強化したが、再発は防げなかった。
 仮置き場は、河川防災対策の「死角」だ。本来は敷地の厳重な管理が求められるが、第1原発近くの中間貯蔵施設に土のうを搬出するまでの一時保管エリアでもある。
 「21年度までに中間貯蔵施設に搬出し終える計画もある。あくまで一時的な保管場所に完璧な防護を施すのは考えにくい」と環境省の担当者は打ち明ける。
 土のうの中身の放射性物質濃度は低く、水質汚染も確認されていない。県除染対策課の担当者は「まずは指針に基づき大雨時の管理を徹底する。その上で川のそばにある仮置き場の土のうをすぐに中間貯蔵施設に運び出し、リスク要因を減らしたい」と話す。
[除染廃棄物の仮置き場]福島県内では除染などにより汚染土や草木など約1400万立方メートルの廃棄物が発生した。このうち3割については大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設に搬入済みだが、残りは環境省や市町村が管理する仮置き場などで保管されている。県内の仮置き場は2021年度末までにほぼ解消される予定で、19年度は400万立方メートルの搬入が計画されている。県内には現在、環境省管理の236カ所と市町村管理の716カ所がある。
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