[2019_10_23_01]電力会社の監督官庁、経済産業省の姿勢が問われている(菅直人ブログ2019年10月23日)
 
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電力会社の監督官庁、経済産業省の姿勢が問われている

 関電をはじめ電力会社に関する不祥事や長期停電など問題が次々と起きています。そうした中で電気事業法に基づいて電力会社を監督する責任を負っている経産省の姿勢が今問われています。
 電気事業法第1条には「この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業者の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。」と規定されています。そして105条には「経済産業大臣は、毎年、一般電気事業者及び卸電気事業者の業務及び経理の監査をしなくてはならない」とあり、続く106条には「業務または経理の状況の報告の徴収」、107条にはそのための「立入検査」が規定されています。
 しかし関電問題に対する野党合同ヒアリングの席での経産省の説明では、経産省自体が「第三者委員会」と呼んでいる、関電が依頼した弁護士らによる社内調査委員会の年末までかかるとされる調査結果を待つ姿勢です。関電が報酬を払って依頼した弁護士等からなる委員会が第三者であるはずがありません。まず「名は体を表す」ので、経産省がこの社内調査委員会を「第三者委員会」と呼ぶのをやめるべきです。そうすればマスコミもそうした呼び方をやめるでしょう。そして106条、107条に基づく立ち入り調査を経産省自身が自らの責任で行うべきです。
 更に経産省はエネルギー全般についての責任を負っている官庁です。すでに世界は原発から再生可能エネルギーに大きく舵を切っています。日本は福島原発事故がありながらいまだに原発に固執し、再稼働のために膨大な投資を続けています。世界で最大の福島原発事故を起こした日本が、原発に戻ることを大半の日本人は賛成していません。日本は太陽光ばかりでなく風力やバイオマスなど再生可能エネルギーの資源が豊富です。経産省内でも心ある人はそう思っているはずです。今国会を原発から再生可能エネルギーへの転換の国会にすべきです。
 そのための障害となっているのが現在の経産省の姿勢です。電力会社の内部には原発に将来性がないことを理解していながら、今、全原発の廃炉が政策決定されると、資産として計上していた原発が廃炉費用などで負債になり、会社として債務超過になって倒産に陥ることを心配しています。いずれにしても日本全体として電力事業は必要であり、現在そこで働いている労働者の雇用を守ることも重要です。
 そこで私は全原発の廃炉を決定しても電力会社が倒産には陥らない案として「原発の一時国有化による全原発廃炉政策」を提案しました。その内容は私のHPで公開していますので、関心をお持ちの方はご覧ください。
 経産省もドイツのように原発をゼロにしても、再エネを中心に必要な電力の供給が可能で、電力会社の存続も可能な方策を真剣に検討すべき時期です。私の政策案では、全ての原発を一時国有化することにより全原発の廃炉を迅速に確実に進める事と同時に、電力会社が原発の廃炉を決めた時点で債務超過になって破綻することを避けるための方策が盛り込まれています。
 1998年、土地バブルの崩壊により銀行の連鎖倒産が発生した際に、当時野党であった民主党が「銀行の一時国有化」を内容とした金融再生法を国会に提出し、自民党の小渕総理が丸呑みして成立し、金融危機を乗り切ったことがあります。原発ゼロの実現は右左といったイデオロギーには関係ありません。日本の将来を真剣に考える人たちが超党派で進めることが望ましいと思います。
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