[2019_09_07_05]大津波予見可否が焦点 東電原発事故強制起訴裁判 19日判決(福島民報2019年9月7日)
 
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大津波予見可否が焦点 東電原発事故強制起訴裁判 19日判決

 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の公判は十九日午後一時十五分から、東京地裁(永渕健一裁判長)で判決が言い渡される。大津波を予見し、事故を回避できたかどうかが最大の焦点となる。
 強制起訴されたのは、勝俣恒久元会長(79)と武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)。被告人の弁護側と検察官役の指定弁護士との主な争点は、(1)大津波を予見できたのか(2)国が公表した地震予測「長期評価」の信頼性(3)対策を取れば事故を防げたのか−の三点。被告三人の弁護士は、大津波は予測できず、事故は防げなかったと無罪を訴えている。検察官役の指定弁護士の主張と真っ向から対立している。
 福島原発告訴団などは二〇一二(平成二十四)年六月、政府首脳や東電経営陣らを告訴・告発した。東京地検は二〇一三年九月、過失責任はないとして四十二人を不起訴とした。告訴団はこのうち六人に絞って審査を申し立て、東京第五検察審査会(検審)が二〇一四年七月、勝俣元会長ら三人を起訴相当と判断した。
 地検は再び不起訴処分としたが、検審は二〇一五年七月に起訴すべきだと再議決。裁判所から指定された弁護士が検察官役となり、双葉病院の患者や介護老人保健施設「ドーヴィル双葉」の入所者合わせて四十四人を死亡させたとして、二〇一六年二月に業務上過失致死傷罪で強制起訴した。
 初公判は二〇一七年六月に開かれ、これまでに東電関係者や専門家二十一人の証人尋問、三人の被告人質問などを行った。昨年十二月の論告求刑公判で、指定弁護士は被告三人それぞれに法定刑の上限となる禁錮五年を求刑。今年三月に最終弁論を行い、結審した。
 強制起訴に伴う裁判を通じ、原発事故後に明らかになっていなかった東電社内のやりとりが法廷で示された。
 裁判では有罪の立証の基礎となる「大津波の予見ができたか否か」で舌戦が続いた。指定弁護士は被告三人が、第一原発の敷地に最大一五・七メートル程度の津波が襲う可能性があるとした社内の試算結果報告を事故前に受けていたと指摘。その上で、情報収集していれば大津波は予見できたと主張した。
 これに対し、被告三人や弁護側は、試算の根拠となった長期評価が学者の間でも見解が分かれているとして、信頼性を否定。長期評価や過去の知見を基にした大津波の予見は不可能と反論している。
 東京地裁が指定弁護士側、弁護側の主張どちらに合理性を見いだすかが、有罪無罪を左右するとみられる。
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