[2019_07_29_04]東海第二原発は老朽・被災で危険なだけでなく経済性もない 原電の卸売電気料金単価がいかに高いか… 利益なしでも17.6円程度 (LNG火力9.2〜13.7円、電力卸売市場の平均単価9.7円) 日本原電の電気を買った会社(つまり東電)も共倒れ 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)(たんぽぽ舎2019年7月29日)
 
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東海第二原発は老朽・被災で危険なだけでなく経済性もない 原電の卸売電気料金単価がいかに高いか… 利益なしでも17.6円程度 (LNG火力9.2〜13.7円、電力卸売市場の平均単価9.7円) 日本原電の電気を買った会社(つまり東電)も共倒れ 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

 とにかく異常である。
 誰もが分かっているのに誰もが問い質さず、誰もが不合理と思っているのに、それが前提となって物事が進む。
 こんなこと、今は枚挙に暇がないので、一体何のことを言っているのか、何でも当てはめられる現代なのが恐ろしいが、この際は「東海第二原発の再稼働をめぐる経済性と東電との関係」である。

◎東京電力は原発に幾ら費用を掛けるつもりか(柏崎刈羽原発工事費用は6800億円)
 東電の電力単価は、電気料金の契約書などから、一般家庭の小売料金は概ね25円前後となる。(月間360kWhとして計算すれば24.51円)。ただし500kWh以上の大口はkWhあたり17円前後(基本料金を除く)となる。
 つまり、東電が利益を出しながら「低廉な」電気を売り続けるには、平均価格は15円ほどが最低線ということになる。新電力や他の電力会社との競争を考えれば、大口はもっと下げることになるかも知れない。
 有価証券報告書の2018年度からは、もっと厳しい現実が見えてくる。
 年間で売り上げた電力量は2303億kWhで、前年比マイナス4.2%減、100億kWhも減っている。電力自由化の影響である。
 売上高の内電力料金収入は6兆327億円、単純に電力量で割れば26.19円/kWhとなる。
 一方、営業費用の内電気事業営業費用は5兆7351億円で、24.90円/kWhとなる。
 この中には、1ワットも電気を生み出さない東電所有の原発の費用、原子力発電費用が9892億円入っている。これがなかったとしたら20.61円/kWhで済んでいたことになる。
 もちろん、維持管理費用は掛かるから、そんなわけにはいかないが、再稼働のための柏崎刈羽原発の工事費用は合計で6800億円とされるから、いかに重たい費用か分かるだろう。
 しかもこれは、2017年10月の段階での数値であり、今後の「特定重大事故等対処施設」の費用を加えれば更に1000億円以上も増えるのではないかと思われる。
 その上更に、東海第二原発の再稼働のために1900億円も出資するというのは、経営判断としては最早考えられない暴挙である。

◎東京電力はいくらで電気を買い取り、売るつもりか

 東海第二原発はとても再稼働などできない。
 新規制基準適合性審査をクリアし、20年運転延長審査も通ったのは事実だが、条件を満たすには防潮堤を造り、緊急時対策所を整備し、格納容器冷却や格納容器ベントなどの設備を改造・設置し、工事認可手続き後の使用前検査に合格しなければならない。
 もちろん、地元の6市村からの同意を取り付けるだけでなく、県民の7割を超える反対の声にどう答えるのか、周辺の30km圏内の「緊急時防護措置を準備する区域・UPZ」の原子力防災計画の策定も終わっていなければならない。
 原電のいう「2021年10月」再稼働は、少なくとも「特重施設」以外はできている前提である。 そのために東電と東北電力から合わせて1740億円相当の資金支援を受けなければならない。
 さらに、運転を継続するには「特重施設」を2023年10月までに造らなければならない。そのためには東電は合計1900億円の資金支援をしていることになる。
 東電は7月16日の記者会見で次のように答えている。
 『我々はお客様に低廉で安定かつCO2の少ない電気というものをお届けするということが使命であると考えております。
 東海第二がそうした電源として耐えうるのかどうかということにつきまして、市場の価格の見通しであるとか、再稼働に必要な安全対策工事の見通し、工事期間であるとか、工事費であるとか、特定重大事故等対処施設設置の見通し、あわせて、さらに地元のご理解を条件に、こういったものを総合的に検討しておると、こういう状況でございます。』
 総額1900億円もの資金支援をするかどうかの判断には、市場価格から見て妥当性のある料金でなければ低廉な電源とは言えないことを事実上認めている。

◎東海第二原発の単価がいかに高いか…利益なしでも17.6円程度 (LNG火力9.2円から13.7円、電力卸売市場の平均単価9.7円)

 いままで日本原電が電気をいくらで売っていたのか。
 まず2010年以前では、2010年までの年平均発電量62億5411万kWh/年とした場合、電力収入を割ると11.7円ほどと見積もることが出来る。
 「特重施設」などを建設した後は、3000億円を賄うことになるのでkWhあたり3.2円ほど余計にかかると見積もることが出来る。
 合わせて14.9円がkWh当たりの単価となる。これに福島第一原発事故により課せられることになった一般負担金の年85.25億円のkWh当たり0.7円を加算すれば、15.6円程度に増える。
 原電が年間500億円の利益を上げようとするならばkWhあたり8円の利益を乗せて、23.6円で売らねばならない。
 しかしこんな単価では誰も買わないだろう。東電の小売価格の平均よりも高いのだから。
 原電は所有する4基の原発の廃炉費用に少なくても1800億円が必要とみられるが、これを15年で積み立てるならkWhあたり2円ほどになる。
 利益なしでも17.6円程度の単価で売る卸売電気料金は、とても高い。
 LNG火力でも9.2円から13.7円、電力卸売市場の単価は平均9.7円である。東海第二原発の単価がいかに高いか分かるだろう。
 どんな角度から調べても東海第二原発を再稼働するメリットはどこにも見いだせない。
 (初出:月刊「たんぽぽニュース」2019.7発行 No283)

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