[2019_07_09_08]原発避難はやっぱり無理 九州南部豪雨で露呈 住民の生命・財産を守るには原発のほうを撤去するしかない 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ舎2019年7月9日)
 
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原発避難はやっぱり無理 九州南部豪雨で露呈 住民の生命・財産を守るには原発のほうを撤去するしかない 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

◎ 2019年7月以降の九州南部豪雨に関して、宮崎・鹿児島両県で合計110万人に避難指示が出されたが実際に避難したのは6300人にとどまった。
 ネット上では車がない、高齢者や幼児がいるなど、避難しようにも動けない窮状が多数書き込まれていた。これは豪雨の問題にとどまらず、原子力災害でも住民の行動としては同じだから、広域避難がいかに困難か実証されたようなものだ。
◎ 鹿児島の現地の人からの情報によると、学校は休みになったのに企業などは無関係に平常どおり営業されたため、低学年の児童の保護者は預け先の確保ができずに大混乱したり、その一方で避難所によっては容量を超える避難者が詰めかけて混乱し、福祉避難所の開設も後手に回るなど人命・健康を守るための避難とはいいがたい実態であった。
◎ 当初から気になっていたので調べてみたところ、下記の図(筆者作成)のように、避難所そのものが浸水想定区域や土砂災害危険箇所に存在しているなど防災体制そのものが整っていない。
 自治体は「避難指示が遅れた」という批判を避けるために、避難者を収容したり救護できる見込みもなく適切な情報提供もないまま、建前だけの全域避難指示を出したのではないか。これでは原子力災害でも同じことが起きるだろう。
http://sustran-japan.eco.coocan.jp/datafile/20190707.pdf
◎ 豪雨の場合は、実際に浸水被害がないかぎり最大2〜3日がまんすれば元に戻れるが、放射能ではそうはゆかない。
 現に福島では「念のため」という見通しで着のみ着のまま避難したところ、そのまま一生戻れなくなったという事態が発生している。
 原子力災害の場合、放射線防護機能もない古い公民館に集まるだけでは被曝を避けられず、水害より条件がはるかに厳しい。
◎ 川内原発に関しては、鹿児島市はかろうじて30km圏外だが放射能は境界線で止まるわけではない。鹿児島市の原子力防災計画はほとんど進展していないという。
 また鹿児島県の広域避難計画では、鹿児島市は避難者受け入れの機能が期待されているが、今回の豪雨対応をみると、実際にそのようなことができるのかきわめて疑わしい。
 原発避難はそもそも無理という現実を認識すれば、住民の生命・財産を守るには原発のほうを撤去するしかないだろう。

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