[2018_12_28_01]膨張して弱くなる都会(島村英紀2018年12月28日)
 
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膨張して弱くなる都会

 6月に起きた大阪北部地震から半年がたった。
 現地ではいまも、ブルーシートに覆われた屋根が目立つ。地震からの復旧が出来ない家が多いのだ。
 地震のマグニチュード(M)は6.1で内陸直下型地震としてはそれほど大きくはなかったが、震度は6弱。震度階では上から2番目だ。
 この地震では、家が損壊したり、瓦が落ちるなど、多くの被害があった。被災家屋は高槻市が約2万棟、茨木市が約1万6千棟もあった。
 しかし被災した家屋の99%もが「被災者生活再建支援法」の対象外になってしまった。公的支援が少ない「一部損壊」だったせいだ。このため、高槻市は最大5万円、茨木市は最大20万円の支援金制度を設けたが、自己負担も大きくて躊躇する人も多い。
 また、公的補助は工事が完了しないと支給されないという制約もある。とりあえずの金額を用意できない人たちにとっては閾(しきい)が高いのである。
 この大阪北部地震は災害に弱いという都会の弱点が露わになってしまった地震だった。大阪北部地震は多くの問題をかかえたまま年を越す。
 大災害になった1995年の阪神淡路大震災(M7.3)は6400人以上の死者を生んだが、その5年後に同じMで同じ内陸直下型地震として起きた2000年の鳥取県西部地震では、死者はなく、怪我人だけにとどまった。
 東京や大阪などの都会には「木密地帯」といわれる古い木造住宅が密集した地帯が多い。東京でいえば、東京東部に限らず、山手線のすぐ外側に北部、西部、南部に広がっている。
 しかも、ここに住んでいる人たちは、行政が提供している耐震診断も耐震補強も、自己負担ができないために出来ない人たちが多い。これらの家屋は地震に限らず、各種の災害に弱い。
 一方、災害のほうは、増えていく傾向にある。
 たとえば2014年に起きて77人の人命を奪った広島市安佐南区の土砂災害がある。戦後、広島市が膨張して広がった地区で、60年以上も安全だった。だが「いままでにない」豪雨で地滑りが起きてしまったのだ。
 じつは「いままでにない」豪雨には理由がある。それは地球の温暖化が「気象の凶暴化」をもたらしているからだ。気象の凶暴化によって、いままでにない大雨が降ったり、いままで大災害がなかった日本にも竜巻の被害が出たり、日本に上陸する台風がいままでよりも強くなったりする。2018年の夏に起きた西日本豪雨による災害もそうだ。
 また世界的にも、雨が多いところはもっと雨が降り、雨が少なかったところでは、もっと雨が少なくなる。たとえば米国の東部の年間雨量は2018年に78都市で史上最大を記録した。
 1978年に起きた宮城県沖地震は大きな被害を生んだが、全壊した家1200戸の99%までが戦後に開発された土地に建っていた。つまり住宅地が広がっていって、これまで人が住めなかった土地が開発されているのである。

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