[2018_12_25_02]インドネシア津波、死者280人超す 火山活動続き新たな津波の恐れも(BBC2018年12月25日)
 
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インドネシア津波、死者280人超す 火山活動続き新たな津波の恐れも

 インドネシア西部のスンダ海峡で22日に発生した津波で、インドネシア国家防災庁は24日、死者数が281人になったと発表した。津波は火山島アナククラカタウの噴火が原因とみられる。アナククラカタウ島の火山活動は現在も続いており、新たな津波が発生する恐れもあるとして、付近住民に対し湾岸部に近づかないよう警告が出されている。
 22日夜、大規模な津波がスマトラ島とジャワ島の湾岸部を襲った。これまでに少なくとも死者281人、負傷者1016人が出ている。
 火山活動によって海底で地滑りが起こり、この地滑りが津波を発生させたと考えられている。
 スマトラ島とジャワ島の間にあるスンダ海峡に位置するアナククラカタウ島は、23日にも噴火。火山灰や煙が噴出した。
 噴火の影響で道路が封鎖されており、救出活動は進んでいないが、被害者の捜索を支援するため、津波被害が大きかった地域に重機が移送されている。

警報発令

 インドネシア国家防災庁のストポ・プルウォ・ヌグロホ報道官は記者会見で、アナククラカタウ島の火山噴火が続いているため、新たな津波の可能性があると話した。
 「海辺での活動を控え、海岸からしばらく離れているよう、インドネシア気象気候地球物理庁が勧告している」とヌグロホ報道官は述べた。
 1927年にクラカタウ島の噴火により形成されたアナククラカタウ島ではここ数カ月、火山活動の活発化が観測されており、火口付近への立入禁止命令も出ていた。
 ヌグロホ報道官は24日、今回の津波で事前に警報が出されなかった理由をツイッターに連続投稿した。ヌグロホ氏によると、インドネシアの早期警報は地震観測のため設置されたもので、地震と同様に大津波を発生させる原因になり得る海底での地滑りや火山噴火には反応しないという。
 ただしヌグロホ氏は、世界の火山の13%がインドネシア1国に集中しているとして、火山活動を観測できるシステムの開発が極めて重要だと付け加えた。
 被害が起きた夜に、津波の事前警告システムは存在しなかったとヌグロホ報道官は認めた。ヌグロホ氏によると、資金不足、観測ブイへの破壊行為、そして技術的故障のため、2012年以降、運用中の津波警告システムはなかったという。

被害拡大の理由

 津波は現地時間22日午後9時30分(日本時間同日午後11時30分)ごろに被害地域を襲った。この日、現地は休日で、地震による警報もほとんど出されなかったとみられる。
 地震に伴う津波発生時に多く見られる海面の低下が、今回は観測されなかった。火山近くに観測ブイがあったとしても、警報を出せる時間は限られていただろうと、専門家は語っている。
 津波により、観光客に人気の複数行楽地で、建物数百棟が損害を受けたほか、自動車が押し流され、樹木も根こそぎ流された。被害地域の中には、ジャワ島西部のビーチリゾート、タンジュンレスンもあった。
 タンジュンレスンでは津波当時、インドネシアの人気ロックバンド「セヴンティーン」がライブ演奏中だった。ソーシャルメディアで拡散している動画には、ライブが行われていたテントに津波が押し寄せる様子が映されている。

インドネシアの津波被害は過去にも

 環太平洋全域のほとんどを円形につなぐ、地震や火山噴火の頻発地域「炎の輪」に位置するため、インドネシアでは津波が多い。
 今年9月には、インドネシア中部スラウェシ島の近海で大地震が発生。地震で発生した津波は湾岸都市パルを襲い、2000人以上が死亡した。
 インド洋で2004年12月26日に発生した大地震でも、大規模な津波が何度も発生した。13カ国で死者約22万8000人が出たが、被害のほとんどはインドネシアで起きた。
 ただし、今回のような火山活動が原因とみられる津波は頻度が比較的少ない。

旧クラカタウ島では1883年に大噴火が

 今回噴火したアナククラカタウ島の位置にはかつて、クラカタウ島という火山島が存在したが、19世紀に噴火で大部分が消失した。1883年8月にあった旧クラカタウ島の噴火は、記録されている中で最も暴力的な噴火の1つだった――。

・最高で高さ41メートルの巨大な津波が発生。3万人以上の死者が出た
・噴出された高熱の火山灰でも数千人が死亡した
・噴火は、爆薬のトリニトロトルエン(TNT)200メガトンが爆発した規模に相当するという。1945年、日本の広島に投下された核爆弾の約1万3000倍にあたる
・噴火音は数千キロ離れた場所でも聞かれたという
・爆発後の1年で、世界の平均気温は摂氏1度以上低下した
・この噴火でクラカタウ島はほとんど消滅した。その後、1927年の噴火により、アナククラカタウ島が誕生した

<解説>何が津波を引き起こしたのか――ジョナサン・エイモスBBC科学担当編集委員

 100年近く前に海上へ姿を現した火山島アナククラカタウのことは、この地域の住民なら誰もが認識していたはずだ。しかし現地の専門家は、アナククラカタウの地鳴りや噴火は相対的に小規模で、断続的だと説明する。
 言い換えれば、この島は大きな全体像の一部だということだ。

考えられる津波の原因

 ただそれでも、火山が大波を作り出すことは、良く知られている。噴火によって、大量の水が移動するのだ。
 22日の津波発生後、最初に撮影された衛星写真は、アナククラカタウ西南西の山腹崩壊を強く示している。この崩壊により数百万トンの岩くずが海に落下し、全方位に波が押し出されたとみられる。

・エイモス編集委員の解説全文はこちら(英語)

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