[2018_11_15_02]<核のごみ 漂流する処分策>幌延町長、センターの必要性強調 住民組織は研究と処分の一体化懸念(河北新報2018年11月15日)
 
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<核のごみ 漂流する処分策>幌延町長、センターの必要性強調 住民組織は研究と処分の一体化懸念

 幌延深地層研究センターは、完成まで紆余(うよ)曲折をたどった。原子力施設の誘致に動いていた幌延町に1984年、核のごみの貯蔵管理、最終処分を研究する「貯蔵工学センター」構想が浮上。道内の反対運動で、核のごみを持ち込まない研究機関に機能を限定し、2001年に開所した。
 核燃料サイクル開発機構(当時)と道、町は(1)放射性廃棄物の持ち込み、使用はしない(2)最終処分を行う実施主体への譲渡、貸与はしない(3)研究終了後は地下施設を埋め戻し、閉鎖する−との3者協定を締結。町は放射性廃棄物の搬入を認めない条例も制定した。
 「原発事故以来、最終処分の研究は重要性を増している」。野々村仁町長(63)は強調した上で「大量の使用済み核燃料が地表で中間貯蔵の形で生き永らえている。ここまで来たのは大変なツケ。原発の再稼働と一緒に、処分の議論も進めるべきだ」と訴える。
 センターの立地で、町には一般会計3%相当の1億6000万円が交付金として毎年入り、経済効果は推計3億円。町農協、雪印メグミルク幌延工場と並ぶ町内3大企業の位置付けだ。
 計画では研究期間は「20年程度」。終期が近づく。「私の主観では、この研究は必要。国の方針がそうなれば、新しいステージを考えることになる」。野々村町長はセンターの操業延長を提案された場合、容認の姿勢をにじませた。
 町に加え、道も「核のごみは受け入れがたい」との宣言条例を作り、最終処分地化を防ぐ二重三重の構えを取ったが、周辺住民の不安は消えない。「原子力に頼るまちは飲み屋と旅館しか残らない」と経済効果を疑問視する声も漏れる。
 「核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会」の久世薫嗣(しげつぐ)代表委員(74)=豊富(とよとみ)町=は「僕らにとってセンターは迷惑施設。基幹産業の農業や漁業、観光にきちんと取り組むことがこの地域を守ることになる」と研究終了を求める。
 東道(おさむ)代表委員(68)=稚内市=は「火山や地震が多く、活断層もどこにあるのか分からない日本で、地層処分がいいと決めた国はそもそも無責任」と指摘。最近の国の動向から、研究と処分の一体化を懸念する。

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