[2018_11_09_03]社説:原発の運転延長 規制委の独立疑う判断(京都新聞2018年11月9日)
 
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社説:原発の運転延長 規制委の独立疑う判断

 ルールが形骸化し、例外が当たり前になる−。当初から懸念された通りではないか。
 間もなく運転期限の40年を迎える日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)について、原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。
 東海第2は福島第1原発と同じ沸騰水型で、30キロ圏には96万人が暮らす。経年劣化で安全が心配な上、避難計画の策定も進んでいない。理解に苦しむ判断だ。
 原発の寿命は、福島の事故を踏まえ2012年に改正された原子炉等規制法で原則40年と規定された。同時に、規制委の承認を受ければ1回だけ、20年まで延長できることにもなった。
 当時の政府は国会で「極めて例外的なケース」と説明し、規制委の田中俊一委員長(当時)も「相当困難」と述べていた。
 にもかかわらず、運転延長の認可はこれで3原発4基になる。規制委は例外の中身を詳細に説明したことはない。
 田中氏の後任の更田豊志委員長は延長について「国会が法律で定めた。法律に従い処分を執行する」と述べている。
 一方、原発を「ベースロード電源」とする安倍晋三政権は、「世界一厳しい規制委のルールに従って認可された原発を再稼働する」と繰り返す。
 政権と規制委がもたれ合っているように見える。規制委の独立性は事実上、失われつつあるのではないか。
 規制委設置法には、福島の事故を機に原発推進と安全規制を同じ役所が担当していたことへの反省が明記されている。規制委はここに立ち戻り、国民への説明責任を果たす必要がある。
 実際の再稼働には地元の同意や、事故時の住民避難計画の策定が必要だ。
 原電は東海第2の運転を巡り今年3月、立地する東海村に加え周辺5市と協定を結んだ。既に那珂市の市長が反対を表明している。茨城県も含めた地元同意を得るのは相当困難だろう。
 運転延長に必要な資金は、東海第2の電力を買っている東京電力と東北電力が拠出する。原発専業の原電は福島の事故以後、原発が稼働せず資金不足に陥っているからだ。
 だが、国に救済された東電に他社を支援する資格があるのだろうか。運転延長で原電は原発を資産として維持できる。運転延長の承認を急ぐ狙いが財務諸表上の危機回避とすれば、本末転倒である。
(京都新聞 2018年11月09日掲載)

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