[2018_11_03_02]<廃炉の課題 女川原発1号機>(上)廃棄物/行き場なしに現実味(河北新報2018年11月3日)
 
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<廃炉の課題 女川原発1号機>(上)廃棄物/行き場なしに現実味

 東北電力が女川原発1号機(宮城県女川町、石巻市)の廃炉を決めた。来年度上期にも原子力規制委員会に廃止措置計画を申請する。解体作業は30〜40年かかる長い道のりだ。東北電が初めて直面する廃炉の課題や影響を探る。(報道部・高橋鉄男、石巻総局・氏家清志)
<見えぬ再処理>

 東北電の原田宏哉社長は10月25日、宮城県庁を訪れ、数時間前に決めたばかりの廃炉を村井嘉浩知事に報告。村井知事は「廃炉は長期間を要する。透明性を持って説明してほしい」と注文し、原田社長も「真摯(しんし)に受け止める」と応じた。
 廃炉工程は使用済み核燃料を燃料プールから取り出して設備を除染した後、線量の低い場所から解体する。最初の関門となるのが、使用済み燃料821体の運び出しだ。
 搬出先の日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)は2021年度上期の完成を見込んでいるが、これまで完成延期を24回繰り返し、稼働は見通せない。使用済み燃料は冷却する必要があり、女川2、3号機プールに移して留め置かれる事態が現実味を帯びる。
 だが2、3号機も容量計5056体に対し、既に新燃料も含め約65%(3281体)が埋まっている。貯蔵余力は10年程度とされ、残された時間は多くない。
 対案は、金属容器に入れ空気で冷やす「乾式」による中間貯蔵だ。規制委の更田豊志委員長は「プールではなく乾式貯蔵を導入すべきだ」と安全面から推奨し、東北電も「敷地内外で導入を検討する」と実現性を探る。ただ、中間貯蔵でも地元に長く留め置かれるという懸念が拭えず、今後の地域課題となる可能性がある。

<しわ寄せ懸念>

 廃炉廃棄物を最終的に処分する道筋も見えない。
 1号機の廃炉では、制御棒や原子炉内の構造物など低レベル放射性廃棄物が生じる。発生量の試算はこれからだが、同じ沸騰水型炉で出力も近い中部電力浜岡原発1号機(静岡県、09年廃炉着手)は、7400トンの発生を見込む。
 低レベル放射性廃棄物は電力各社が責任を持って地中などの管理先を決める。処分先は、国が責任を持つ高レベル放射性廃棄物も含めて決まっていない。
 「(地元に留め置かれる)懸念はある。処分する場所がなければ、どこかにしわ寄せが出る」
 村井知事は原田社長との面会後、記者の質問に答え表情をこわばらせた。石巻市幹部は「女川原発内に何も残さない方法で処分を検討するべきだ」と早くも警戒感をにじませる。
 国内初の廃炉に01年に着手した日本原子力発電東海原発(茨城県)は今春、作業を終える計画だったが、廃棄物対応で2度延期して25年度にずれ込んだ。
 「廃棄物処分は当事者意識を持ち対応する」と原田社長。廃炉時代に入り、責任は一層重くのしかかる。

[使用済み核燃料]原子炉でウラン燃料を燃やした後の燃料。日本は再処理でプルトニウムを抽出し、再び原発で使う核燃料サイクルを掲げる。再処理後は「核のごみ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物が残る。

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