[2018_10_30_04]「業務執行、全て社長に」 東電元会長、原発事故謝罪(東京新聞2018年10月30日)
 
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「業務執行、全て社長に」 東電元会長、原発事故謝罪

 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の公判が三十日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた。事故当時の最高責任者だった勝俣恒久元会長(78)が初の被告人質問に臨み、業務執行に関する会長の職務権限について「ない」と否定。「社長の求めで助言することはあったが、業務執行はすべて社長に譲っていた。各部に直接関わることはなく、指揮する立場にない」と強調した。
 公判の最大の争点は、大津波を予測できたかどうか。東電の子会社は二〇〇八年、国の地震予測「長期評価」を基に最大一五・七メートルの高さの津波が原発を襲うと試算。勝俣元会長は同年六月、社長から会長に昇格しており、試算に対する認識が焦点になっている。
 昨年六月の初公判では「津波や事故の予測は不可能だった。刑事責任はない」と無罪を主張していた。
 勝俣元会長はこの日の被告人質問で、弁護人から社長の職務権限について問われると、取締役会などで最重要案件を決める権限があるが、組織が巨大だとして「すべてを直接把握するのは不可能に近い。権限を各部長らに付与し、それが果たされているか見る役目だった」と説明した。
 被告人質問の冒頭では、「事故で亡くなられた方、遺族の方、ご迷惑を掛けた地域のみなさまに大変申し訳なく、社長と会長を務めた者として深くおわび申し上げます」と謝罪した。
 武藤栄元副社長(68)、武黒一郎元副社長(72)は被告人質問を終えており、最後に登場した最高責任者の認識が注目されていた。
 武藤元副社長は自身の被告人質問で、〇八年六月、原発敷地を越える最大一五・七メートルの津波の試算の報告を受けたが、同年七月に外部機関に試算方法を調査委託する方針を決めたと説明。「先送りと言われるのは大変心外だ」と述べていた。武黒元副社長も外部機関への調査委託について「いいと思った」と、武藤元副社長と同様の判断をしたと証言している。

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