[2018_10_20_01]【社説】九州の太陽光 「潜在力」が示された(東京新聞2018年10月20日)
 
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【社説】九州の太陽光 「潜在力」が示された

 九州電力が太陽光発電の出力制御に踏み切った。原発の電気が最優先、お日さまは後回しということだ。それにしても電気が余って困るとは−。この国の豊かな潜在力。生かさない手はないのだが。
 何とも不思議、というより非常にもったいない。
 全国に先駆けて、原発四基を再稼働させた九州電力。好天で送電線の空きが少なくなったため、太陽光による電気の受け入れを一時取りやめるという事態になった。
 電力小売りが自由化されても、既存の大事業者による送電網の独占状態は続いている。電力会社が過剰と判断すれば、せっかく発電可能な電力をむだにするしかないのである。
 少なくとも一つ、明らかになったことがある。日本は、未来の「エネルギー大国」になり得るということだ。長い間、この国は「資源小国」と言われてきた。石油、石炭の時代が続いていたからだ。そのために、原子力を「準国産エネルギー」ということにして、原発を優遇し続けてきた。
 だがこの国では、太陽こそ「純国産エネルギー」。太陽光は無限にあって、しかもただ。その上、火山の多い九州は地熱資源も豊かな半面、原発にはとりわけ不向き。本来、自然エネルギー活用で世界をリードすべき土地柄ではないのだろうか。
 ではなぜ、太陽光の電力が“制御”されてしまうのか。
 「原発の電気を最優先で送電網に流しなさい」とする、国のルールがあるからだ。再生可能エネルギーを主力にすると言いながら、旧態依然の“原発びいき”。「純国産」を普及するには、これをまず改めるべきではないか。
 「自然エネルギーは天候に左右されるので、不安定だ」と言われるが、日本は南北に細長く、気象条件もさまざまだ。例えば、北海道や東北には風が豊富にある。風はお日さまが沈んだ後も吹く。
 全国各地の“埋蔵資源”を開発し、調整力を高めて、融通、補完し合う。集中から分散、そして連携へ−。既存のインフラを基にして、そんな新たなシステムを構築できれば、「エネルギー大国日本」も絵空事とは思えない。
 もちろん送電網の大幅な増強が不可欠だ。コストはかかる。
 しかし、安全対策から廃炉、核のごみの処分まで、原発の方がよほど“金食い虫”だ。石油や石炭の輸入も減る。
 そう考えれば、決して損な投資ではないはずだ。

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