[2018_10_13_01]<伊方原発>再稼働迫る中の訓練 実効性に疑問の声 大分(毎日新聞2018年10月13日)
 
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<伊方原発>再稼働迫る中の訓練 実効性に疑問の声 大分

 ◇高齢者避難に不安も

 四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の重大事故を想定した大分県の原子力防災訓練が12日、大分市佐賀関などであった。伊方原発は「日本一細長い」とされる佐田岬半島の付け根に立地。事故が起きれば、原発西側の住民約4700人が孤立する恐れがある。27日には再稼働が予定されている。今回は初めて佐伯市を避難ルートに加えたが、「大津波が大分側を襲ったら……」「高齢者が訓練通りに動けるのか」などと訓練の実効性に対し、疑問の声が漏れた。【田畠広景、柳瀬成一郎】

 ◇原発事故

 事故は震度6強の地震が発生し、原子炉が停止、放射性物質が流出したと想定。広瀬勝貞知事は内閣府や中村時広・愛媛県知事ら関係機関13カ所を結ぶテレビ会議に出席した。中村知事は「避難受け入れにご協力を」と要望。広瀬知事は「港湾は大丈夫と聞いている。受け入れの連絡をしている」と応じた。
 大分への海路避難訓練は今回で4回目。住民計40人がフェリーなどに分乗し、大分市佐賀関と佐伯市に避難を始めた。

 ◇最短45キロのまち

 正午前、民間のフェリーで大分市佐賀関の佐賀関港に約20人が到着した。2本の柱状の検知器を通り抜ける「ゲート型モニター」をくぐり、放射性物質が付着していないことを確認。さらにバスでの内陸輸送を検証するため、由布市の挾間公民館に向かった。伊方町民からは巨大地震後の海路避難への不安が聞かれた。同町の向井範幸さん(62)は「母は心臓が悪い。体の不自由な人に配慮した別の避難ルートがあってもいいのでは」。自営業、山下一生さん(62)は「大地震で、むしろ大分が無事なのだろうか」とこぼした。
 また、今回は新たに、放射性物質が操業中の漁師に付着した場合を想定した除染訓練も初めて実施。左腕に付着した漁師に扮(ふん)する県職員に、保健師が「マスクと手袋を付けて、ウエットティッシュでぬぐって」と丁寧に指導した。佐賀関地区の女性(81)は「原発からの近さが気になる。再稼働は心配です」と吐露した。

 ◇津波がきたら……

 佐伯市では松山海上保安部の巡視船で約20人が佐伯港に到着し、放射性物質の付着の確認など同様の検査があった。検査を終えた住民はバスで市保健福祉総合センター和楽に到着し、保健師らの問診を受けた。
 ここでは受け入れ先の懸念の声。佐伯港付近は南海トラフ地震で最大7.40メートルの津波が想定される。伊方町の山中宏さん(71)は「受け入れ先も大混乱しているはず。逃げ場の不安がつきまとう」と話す。さらに、山中さんが住む正野地区は約300人が住むが、半数が高齢者だ。訓練通りに逃げられるのかどうか。悩みは深い。

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