[2018_10_11_02]<九電>再生エネ拡大に足かせ 「出力制御」方針に疑問も(毎日新聞2018年10月11日)
 
参照元
<九電>再生エネ拡大に足かせ 「出力制御」方針に疑問も

 九州電力は13日にも再生可能エネルギーの出力制御を求める方針を表明。離島を除いて全国初となるが、今後再エネの普及が更に進めば、他のエリアでも実施されるケースが出てくる可能性がある。出力制御が頻発すれば再エネ事業者の収益に影響を及ぼすことになり、政府が再エネの主力電源化を目指す中、導入拡大に水を差す恐れもある。
 2011年の福島第1原発事故後、政府が再エネの固定価格買い取り制度(FIT)を創設したのを機に太陽光発電などの導入が各地で拡大。原発の再稼働が進まない中、政府は今年7月に閣議決定したエネルギー基本計画で再エネを「主力電源化」すると明記した。
 地価が安く日照時間が長い九電管内では、太陽光発電が順調に広がり、今年8月末時点の導入量は原発約8基分に相当する807万キロワット。原発も4基が再稼働しており、出力量は414万キロワットに達する。これに対し、管内の昼間の需要は少ない日で1000万キロワット以下。供給力が需要を大幅に上回れば、大規模停電を起こしかねない事態となっていた。
 出力制御は、12年にFITを定める法律が施行された際に導入された「優先給電ルール」に基づくもの。政府は「太陽光や風力は天候次第で発電量が大きく変動するためコントロールが困難で、急激な発電の増加で需要量を上回ることがないようにするため、受け入れ量そのものを制御せざるを得なくなる」(経済産業省)と説明。出力制御の仕組みがあることで、再エネの大量導入が可能になるとしている。
 再エネ事業者はこのルールに同意した上で参入しており、年間30日を上限に無補償で出力制御に応じることになっている。だが、出力制御が頻発すれば、その分電気を売ることができず再エネ事業者の収益を圧迫する。また経産省は今後、家庭や事業者が太陽光で発電した電気を大手電力会社が買い取る価格を現行の半分程度にする方針を打ち出しており、こうした「逆風」が再エネ導入を鈍化させるとの懸念もある。
 NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は「需要が低い時期には原発や石炭火力発電の出力をあらかじめ少なくしておくなど、再エネの出力制御をする前にできることはあるはず。二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光や風力を最大限活用し、再エネの普及を進めていくべきだ」と指摘している。【袴田貴行、和田憲二】

KEY_WORD:FUKU1_: