[2018_09_26_01]社説:伊方原発決定 不安に向き合ったのか(京都新聞2018年9月26日)
 
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社説:伊方原発決定 不安に向き合ったのか

 火山噴火が原発事故を引き起こすことはめったにないから、再稼働は容認できる−。広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について出した決定である。
 住民の不安に向き合ったものとは言い難い。拙速な再稼働は禍根を残さないか。
 昨年12月に同じ広島高裁が同原発の運転を差し止める仮処分決定を出したが、四国電力が異議申し立てを行い、同高裁は異議を認めた。四国電はただちに再稼働手続きに入る見通しだ。
 広島や長崎の被爆者らが2016年3月に運転差し止めを求めて広島地裁に提訴と仮処分の申し立てを行った。同地裁は17年3月に差し止めを認めない決定を出したため、住民側は広島高裁に即時抗告を行い、同年12月に運転差し止め決定が出ていた。
 昨年12月の即時抗告審決定は、同原発から約130キロ離れた熊本県の阿蘇カルデラで大規模噴火が起きれば、火砕流が原発敷地内に到達する可能性があるとして、四国電の火山リスクの想定は過小と判断していた。
 一方、今回は「大規模な破局的噴火が起きる可能性の根拠が示されていない」などとして正反対の結論を出した。
 「運転期間中に大規模噴火が起きる可能性は低い」と主張した四国電の主張を全面的に認めた形だ。その理由は次のような内容だ。
 国が原発に重大な損害をもたらす火山噴火に対して具体的な対策を決めていない上、国民の多くもそれを問題にしていない。だから社会通念上、伊方原発の安全性は欠けていない−。
 国が想定していないから安全という考えだ。社会通念や想定を超えた福島第1原発事故の反省を踏まえているとは思えない。
 たしかに、火山噴火による原発事故の確率は高くはないだろう。だが原発事故は一度起きれば長期間、深刻な事態をもたらす。原発事故を、台風や洪水などの一般的な災害と同様に扱うことが適切だろうか。
 最新の地球科学の知見では、火山噴火や地震の予知は不可能なことが明らかになっている。今月6日の北海道地震でもそれは明らかになった。
 福島の事故以来、大津地裁などで原発の運転を禁じる司法判断が相次いだが、いずれも高裁段階で覆った。上級審には原発再稼働を進める国の意向が強く影響しているのではないか。司法が行政を追認するばかりでは困る。主体性を発揮して判断してほしい。

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