[2018_08_22_03]<原子力事業提携>再稼働進まぬBWR 背景に強い危機感(毎日新聞2018年8月22日)
 
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<原子力事業提携>再稼働進まぬBWR 背景に強い危機感

 東京電力ホールディングスと中部電力が原子力事業での提携に向けた協議に入った。両社の原発建設を手掛ける日立製作所と東芝も加えた4社は21日、提携に関する覚書を締結、原発事業の効率化策などを探る方針だ。東電と中部電は2011年3月の福島第1原発事故以降、保有する原発の再稼働が進まない一方、設備の維持・管理費が重荷となっている。また、日立など原発メーカーは国内市場が縮む中、事業継続には効率化が必須で、両電力と連携を強化することにした。
 協議の進展次第では、他の電力会社も巻き込んだ国内原子力事業の再編につながる可能性もある。ただ、4社の思惑には違いもあり、提携協議の先行きは不透明だ。
 「検討内容を検討する段階だ」。4社の提携協議入りが報道された22日、関係者は具体化には相当の時間がかかるとの認識を示した。協議では、原発の保守管理や廃炉作業の共同化などがテーマになる模様だ。4社のうち、東電と中部電は15年に火力燃料調達などを共同で行う合弁会社「JERA」を設立。今後は国内火力発電事業の統合を計画している。今回の協議は、火力で築いた提携関係を原発にも広げることを目指すものだ。背景には、原発事業の先行きへの強い危機感がある。福島原発事故以降、両社が保有する福島第1原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)と呼ばれる原発は、国内で1基も再稼働できていない。原発は運転していなくても設備の維持・管理や技術者の確保など多額の費用がかかる上、再稼働に向けた安全対策費も膨張。原発事業の効率化が重要な課題となっている。
 一方、原発メーカーの日立や東芝も福島事故後は国内原発の新規建設が停止し、事業継続に苦労している。関係筋は「新規案件なしでは、建設や運転ノウハウも継承できない」と懸念する。日立は英国での原発新設計画を進めているが、総事業費が見込みより膨らむなど、リスクも大きくなっている。東芝は米原発事業の失敗で経営危機に陥った経緯から海外市場から撤退する一方、国内原発事業は継続する方針。だが、それには人材確保も含めた効率的な運営体制が不可欠だ。
 そんな事情から4社は提携協議に乗り出したが、4社の思惑には違いも大きい。例えば、経営再建計画で原子力事業の再編を掲げる東電は今回の提携を再編の足がかりにしたい意向と見られるが、中部電にはそこまでの覚悟はうかがえない。また、日立は東電や中部電が英原発建設計画に出資することを期待するが、両電力は慎重だ。経産省幹部は「国内原発の再編と原発輸出促進につながれば」と期待するが、提携の成果がどこまで上がるかは分からないのが実情だ。【袴田貴行、小倉祥徳】

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