[2018_07_19_02]7/11東電本店合同抗議主催「東電は責任をとれ」連続講座 「東電は原発を運転する資格も余力もない」 「柏崎刈羽原発の再稼働なんてとんでもない」 蓮池 透さんのお話を聞いて 横田朔子 (たんぽぽ舎ボランティア)(たんぽぽ舎2018年7月19日)
 
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7/11東電本店合同抗議主催「東電は責任をとれ」連続講座 「東電は原発を運転する資格も余力もない」 「柏崎刈羽原発の再稼働なんてとんでもない」 蓮池 透さんのお話を聞いて 横田朔子 (たんぽぽ舎ボランティア)

蓮池 透さん(元拉致被害者「家族会」事務局長)は元東京電力の社員で、長年原子燃料サイル部で働いてこられた方です。
今回のお話は、エンジニアとしての専門分野に関するものではなく、東電内部のどうしようもない構造的な体質、通産省(※)と東京電力の癒着の実態をラフな言葉で語られました。その概要を報告します。以下、◎は蓮池 透さんのお話から引用です。

◎東電に原発を運転する資格はない!

・東京電力の借金は昨年で10兆円を超えている。その東電が今年は黒字決算となっている。膨大な借金を収入とみなし、黒字にさせた。
・今、東電は金を稼ぐのに躍起になっている。私は、もう東電は福島の復興と廃炉、それから被害を受けた福島県の方々、その周辺の方々、避難している方々、避難していない方々等の救済とケアに専念すべきであって、もう原発を運転する資格は東電にないと思っている。
 これは東京電力だけではない。要するに核のゴミ捨て場がないという事だけで一発アウトだ。
・世界一厳しい基準なんてとんでもない。対症療法で、張りぼて基準でしかない。・炉心溶融についても東電は100万年に1回とか1000万年に1回と言ってきた。
 しかし福島第一原発では、同時に3つの原子炉で炉心溶融が起きた。

◎避難計画?

 私の実家は、柏崎の1号機からわずか3kmで、とても他人ごととは思えない。
 3〜4年前に母が避難計画の事で東電に問合せしたら、「すみません。がんばります」としか言われなかった。数年後に母がまた問い合わせると、「まず近くの小学校へ避難して下さい。その後はスキー場(100km以上離れている)へ車で行って下さい」と。
 地元での避難訓練に母が参加しようと行ってみたら、地元の役付きの人たちばかりで一般住民は対象外だった。避難計画は無いに等しい。日本で避難計画の概念は成り立たない。

◎日本は潜在的核保有国

 47トンものプルトニウムの処分をどうするか。プルサーマルでの使用量は微々たるもの。「もんじゅ」は廃炉にしたが、高速炉路線は保持。他国から、日本は潜在的核保有国と言われてもしょうがない。本当は処分しなければならないのにどん詰まり状態だ。冷静に、理論的に考えれば、原発はつくってはいけない。

◎通産省(※)の“安全審査官”は原発の事は何も知らない

 私が通産省(※)対応をしていた時、安全審査官の勉強会(通称ヒアリング)を担当し教えた。彼らは本当に何も知らない素人だった。だからまともな質問は殆んどなく、文章のてにおはの類いを訂正するばかりで、まるで国語の勉強会だった。原発に関する知識を持たない素人たちが、安全審査に関わっているのが実情だ。

◎“昼の会議で解決できない案件は夜で”!

 当時は通産省(※)のお役人への接待は日常茶飯事で当たり前。特に地方電力会社は豊富な交際費で接待した。
 当時はパソコンはなく、通産省(※)から質問されるたびにメーカーに電話で聞くというパターンで、私たちは“テレホンエンジニア”と呼ばれた。東電だってそんなにわかっていないので、メーカーが頼りだった。

◎「公開ヒアリング制度」の実態は、東電の自作自演

 第一次は通産省(※)主催で、電力会社が説明した。第二次は「原子力安全委員会」が主催し、通産省(※)が一般住民に説明した。以前九電でヤラセ問題が発覚したが、どこの電力会社でもヤラセは日常茶飯事だった。
 意見募集したら、原発反対派はどんどん意見を書いて郵送してきたが、推進派は意見を書かない。だから東電側が主婦とか農民をよそおって質問を作為的に作った。大体7対3の比率で推進派を多くしていた。意見陳述書を出してもらう人を予め決めて、内容も東電が考えて作った。
 柏崎市の1号機と2号機(刈羽村)の時は、原発反対派と機動隊がこぜりあい、逮捕者が出た。3、4号機は、対面型をやめて文書のヤリトリだけにした。6,7号機(沸騰水型の新型)は、県庁の講堂で行ったが、隣りは警察本部だった。
 傍聴希望の往復はがきがくると、一人ひとり反対派かどうかをテェックして、原発推進派の傍聴希望者が多くなるように設定した。

◎通産省(※)は電力会社まかせ

 当時はパワーポイントがない時代で、通産省(※)の説明はOHPかスライドを使用していた。通産省(※)の指示で、東電の対応班がカラースライドを作成。数千万円の費用はすべて東電が負担させられた。説明中、東電は楽屋に待機。
 原発反対派の質問・陳述が出ると、通産省(※)側が東電に答えを求める電話がかってきて、東電側は「答えは資料の〇〇頁の△△番にあります」と教えた。議事録も東電側が作成した。
 アメリカの原子力委員会はエキスパートが揃っているが、日本は、答申書に添付する資料はすべて電力会社が作成した。

◎吉田所長のつぶやき

 柏崎はフクイチと同じBWR(沸騰水型)だが、違う。柏崎は「A−BWR」だ。AはAdvancedで、先進的・より進歩したという意味。新型BWRと言える。
 昔、福島第一原発の故吉田所長と一緒に働いた事がある。吉田所長は私に「A−BWRは砂上の楼閣さ」と言っていた。忘れられない言葉だ。

◎日本における原子力行政の実態

 「安全審査」は欺瞞に満ちた時間稼ぎの儀式だ。原子力村でかたまって利権構造がつくられている。福島第一原発事故以後も原子力村は脈々と続いている。この利権構造を破壊しない限り日本の原子力行政は変わらない。原発は結局金で動いている。一部の人が金で潤っている。

 蓮池さんは2時間の間、原稿なしで語られた。公式発表では絶対に聞けない、いわば東電に対する内部告発だと思った。
 通産省(※)の実態…どうしようもない腐敗ぶりにはただただ驚かされるばかりだった。
 たかりの構造、電力会社との癒着は目を覆うばかり。
 原発被害者が聞いたらどんな気持ちになるだろうか。
 過酷な避難生活を強いられている人びとが聞いたら…。
 私たちは、勇気ある蓮池さんの話を決して聞きっ放しにしてはならないと、痛感した。

(※)注:「通産省」は現在の「経済産業省」のことです。

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