[2018_07_04_03]<大飯原発控訴審>差し止め取り消し 「危険性無視しうる」(毎日新聞2018年7月4日)
 
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<大飯原発控訴審>差し止め取り消し 「危険性無視しうる」

 ◇3、4号機 名古屋高裁金沢支部が住民側逆転敗訴の判決

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを周辺住民らが求めた訴訟の控訴審で、名古屋高裁金沢支部は4日、差し止めを命じた2014年5月の1審・福井地裁判決を取り消し、住民側逆転敗訴の判決を言い渡した。内藤正之裁判長は「原発の危険性は社会通念上、無視しうる程度にまで管理・統制されている」と述べた。東京電力福島第1原発事故以降に起こされた運転差し止め訴訟で、高裁判決は初めて。
 判決はまず、生命を守り生活を維持する人格権について、「原発の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって侵害するということはできない」と指摘。「具体的な危険性が万が一でもあるかが、差し止め判断の対象となる」とした1審の判断を覆した。
 その上で、危険性を判断する基準として、「(原発の)設備が想定される自然災害等の事象に耐えられるだけの十分な機能を有し、かつ重大な事故の発生を防ぐために必要な措置が講じられているか否か」と明示。今春に再稼働した3、4号機の審査で使われた新規制基準や、この基準に適合しているとした原子力規制委の判断について不合理な点はないとした。
 また、控訴審で元原子力規制委員長代理の島崎邦彦・東大名誉教授が「大飯原発の基準地震動の算出のために関電が使った計算式は、揺れの想定を過小評価している」と証言したことにも言及。「対象となる活断層の断層面積は、詳細な調査を踏まえて保守的に大きく設定されており、基準地震動が過小とはいえない」と結論付けた。
 一方、原発について「福島事故の深刻な被害の現状等に照らし、廃止・禁止することは大いに可能」としながらも「判断は、もはや司法の役割を超えている」と強調。国民世論を背景に立法府や行政府が判断すべきだとした。
 1審判決は大飯原発の安全技術や設備について冷却や放射性物質の閉じ込めに欠陥があるとして「脆弱(ぜいじゃく)なものだ」と運転差し止めを命令。関電側は「科学的、専門技術的な知見を踏まえずに、裁判所が独自に判断したものにすぎない」と控訴していた。
 関電は判決を受け、「3、4号機の安全性が確保されていることについて、裁判所にご理解いただいた結果だ」とのコメントを発表した。差し止め判決は確定しなければ運転が可能で、3、4号機は現在、営業運転中。【岩壁峻】


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