[2018_07_04_01]4.観測強化地域,特定観測地域の経緯(国土地理院2018年7月4日)
 
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4.観測強化地域,特定観測地域の経緯

4.観測強化地域,特定観測地域の経緯
1.はじめに
観測強化地域と特定観測地域は,1968年7月に当時の測地学審議会が建議した第2次地震予知計画の中で考え方が示され,これを踏まえて地震予知連絡会により1970年にはじめて指定され,その後,地域の見直しなどにより若干の変遷を経ながらも,2008年に解消されるまで40年近くにわたって存続した.
 指定地域では様々な観測が重点的に行われ,その結果地震予知研究上重要なデータや多くの知見を得ただけでなく,地震防災に関わる行政施策を実施する際にその範囲を定める法的根拠がない中,その根拠としても活用されてきた.このように,地域指定制度はわが国の地震予知研究及び地震防災に大きな役割を果たしてきた.
以下,ここでは地域指定の設置から解消に至る経緯と,各指定地域における指定以来の地震活動の概要についてこの10年間を中心に述べる.
2.観測強化地域,特定観測地域の指定とその経緯
第 2 次地震予知計画(1968 年7月 16 日測地学審議会建議)において,情報交換及び総合的判断を行う場としての地震予知に関する連絡会の設置とともに,地震予知研究計画の実施を早め,観測を順次充実するための方策として,次のような地域指定の考え方が提示された.
@全国の基本的な測地,検潮および大,中,小,地震の観測等をすみやかに従来の建議の水準に達しせしめる.
A過去に大地震の記録がある地域等を特定観測地域として,各種の研究観測を集約的に行うとともに,これら研究観測を迅速かつ,精密に実施するに必要な測器の開発を進める.
B@およびAの観測,研究等によって異常な現象が見出された地域は,観測強化地域として,特に観測を強化する.
CBの観測資料を検討の結果,異常な現象が地震に関連するものと認められた地域は,観測集中地域として密度の高い調査,観測を集中して行い,地震予知の実用化につとめる.
 この考え方に基づき,地震予知連絡会は1969年に観測段階指定基準小委員会を設置して指定地域の候補地を選定し,1970年2月の第6回地震予知連絡会での検討を経て,当時房総半島及び三浦半島において大きな隆起が観測されていた関東南部を観測強化地域として,また,東海,北海道東部等8地域を特定観測地域として選定した(図1).これにより各指定地域では上記の考え方に基づいて観測の重点化が図られることとなった.なお,東海地域は,駿河湾に大きな地殻歪エネルギーが蓄積されているというデータが示されたことなどから,1974年2月に観測強化地域に変更となった.
 その後1978年に,特定部会において特定観測地域の見直しが行われ,同年8月に,20〜30年のうちに発生する可能性があると思われるマグニチュード7クラス(日本海溝沿いについてはマグニチュード8クラス)の地震を対象として,
@過去に大地震があって最近大地震が起きていない地域
A活構造地域
B最近地殻活動が活発な地域
C社会的に重要な地域
の4つを選定方針とし,全国の 20%程度の面積を目安として,新たな指定地域の選定が行われた.この見直しにより,観測強化地域として南関東と東海の2地域,特定観測地域として北海道東部,秋田県西部等8地域が改めて選定され(図2),併せて各地域の選定理由が示された(表1).なお,各指定地域の範囲は地図上では長方形で描かれているが,漠然としたものであり,丸印または楕円で表してもよい程度のものとされた

 その後も指定地域の見直し作業は何度か行われている.1983 年から特定部会で指定地域の見直しに関する検討が行われた.また,1992年からは各指定地域についてその位置づけの検討を視野に入れながらレビューが行われ1994 年には地震予知連絡会地域部会報告がまとめられた.しかし,いずれの場合も指定地域の変更には至らず,2008年に指定地域そのものが解消されるまで,これら2地域と8地域がそれぞれ観測強化地域,特定観測地域として存続した.

2.指定地域における観測の強化
指定された観測強化地域または特定観測地域では,上記の方針に基づいて関係機関による観測が強化された.各地域で強化された主な観測内容は表2に示すとおりである.
3.強化地域部会と特定部会
 南関東(当初は関東南部)及び東海の2つの観測強化地域については,1975年11月に設置された関東部会(ワーキンググループを含め1976年3月以降1981年7月までに計30回開催)及び東海部会(1976年7月以降1978年8月まで7回にわたり開催)において検討が行われ,1980年6月には特定部会検討会でも議論が行われたが,1981年4月には関東,東海両部会を統合する形で強化地域部会が設置され,以後定例の本会議以外に,この部会において集中的に議論が行われてきた.設置以降32回の強化地域部会が開催されている.このうちこの10年間の開催は3回である.
 特定観測地域についても,8 つの特定観測地域の地殻活動に関する検討を行うこととして1975年11月に特定部会が設置された.なお,北海道東部については同時に設置された北海道部会において当初検討が行われたが,この部会は1976年4月に特定部会に含まれることになった.特定部会は,設置以降北海道部会などの関連部会や打ち合わせ会等も含め 16 回開催されている.うちこの10年間における開催は3回である.
 強化地域部会と特定部会は指定地域における大地震の発生や異常な地殻活動に関する総合的な判断を行い,数々のコメントを国民に向けて発してきた.なお,これらの部会は2005年度に,東日本,中日本,西日本の3つの地域部会に再編成された.
 なお,東海地域については1977年4月に地震予知連絡会の中の組織の一つとして東海地域判定会が発足した.東海地域判定会は,1979年8月7日気象庁に設置された地震防災対策強化地域判定会その機能が引き継がれることとなった.
(後略)


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